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出会い
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とても大人な人なのだろう。
教授は泣き出してしまった俺の頭を、ポンっと、軽く叩いて向かいの席に座り込んだ後は、そのまま黙ってコーヒーを飲んでいた。
慰めもなく、ただ泣かせてくれることが嬉しかった。
しばらく泣いて、落ち着いた俺に、新しいコーヒーが差し出される。
「私はね、君がこれからどうするべきかなんて、言う気はない。だから、何も言わない。君の問題は君だけのものだ。だけどね、話を聞くことはできるし、こうして一緒にコーヒーを飲むこともできる」
そう言うと、一枚の名刺を出してくれる。
プライベート用の名刺なのだろうか、“朝比奈”とだけ書かれたシンプルな紙の裏には、携帯番号が書かれていた。
「いいんですか・・・?」
「君がうちの大学の子ならややこしいんだろうけど、ね。私にだって、若い子と友だちになる権利はあるから、大丈夫、大丈夫」
本当はよくないのだろうが、俺を放っておけなかったんだろう。朝比奈教授の優しさに甘えておくことにする。
それに、正直、この出会いを今だけのものにしたくないと思った自分もいて、また会って話を聞いてもらいたいと、思っていて。
人付き合いの苦手な俺にとって、こんなこと初めてで、よほど弱っているのかとも思う。
そうして、俺は、一つの小さな転機を、自分が本当の意味で変われるきっかけを、逃がさずに掴むことができたのだった。
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