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罪悪感
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アキラを忘れられない。今でもあの頃以上にアキラを愛している。
そう気づいたあの後、俺はすぐに八嶋さんと連絡を取って、一番早く会える日を確認し、その日に会う約束をする。
八嶋さんは、あれから8年経った今も、
変わらずに俺と接してくれていて、何度も食事や飲みに誘ってくれていた。
告白の時に、『思う存分口説く』と言われていたが、八嶋さんは全くと言っていいほど、俺にそういうことを感じさせなかった。
俺のことはもう諦めてくれたのか、と思っていたが、何度も外で二人きりで会う内に、そうではないと気づかされることになる。
それは、夜景の見えるレストランとやらに連れていかれた時のことだった。
『すごい、こんな綺麗だと思わなかった・・・』
独り言を呟きながら、窓の外の夜景に魅入っていた。
ふと、気がつくと、八嶋さんは夜景ではなく、俺を見つめていた。窓ガラスに写ったその顔は、俺が今まで見たことのない、切なげで男の色気に満ちていて、その目は確実に、獲物を狙う雄の目で。
思わず視線をそらす。気づかれてはいけない。本能的にそう思った。今、あの目を気づいたことにすると、きっと八嶋さんはもう遠慮はしてくれない。
ある意味で、俺は最低なほど鈍いとわかる。八嶋さんは、俺を口説かなかった訳じゃなく、ただひたすらに、自分を抑えてくれていただけなのに。
それからしばらくして、迷った末に、八嶋さんに全てを打ち明けることにした。
八嶋さんだけでなく、アキラ以外の人間と恋愛ができるとは思えないこと。
そして、その時にはすでに始まっていた先生との関係について。
きっと、幻滅され、罵られて終わるだろうと思っていた俺の告白は、意外なほどあっさりと八嶋さんに受け入れられた。
ただ、先生との関係については、「おれじゃダメなのか?」と聞かれたが、八嶋さんが俺を好きな限り、八嶋さんを利用するようなことはできない、そう説明すると泣きそうなほど苦しい表情を、していた。
「リョウがおれを好きになれないのはわかった。でも、おれもリョウを好きでいることを止められない。その気持ち、リョウにならわかるだろ?・・・だから、おれがリョウを勝手に好きでいることだけは、許してほしい」
そんな風に言われて、泣きそうになった。こんな俺なんかに、そこまで言ってくれるなんて。
そして、そんな八嶋さんを好きにもなれず、深く傷つけている自分を、どうしようもなく嫌悪していた。
俺と八嶋さんの関係は、八嶋さんの犠牲の上に成り立っている、そう実感させられていた。
「おー、久しぶりだな、リョウ。しばらく見ない内に、またキレイになったんじゃねーの?」
待ち合わせ場所に着くなり、冗談を飛ばしてくる。
今では、俺は八嶋さんに罪悪感を覚えることは少なくなった。
それは、八嶋さんに恋人ができたと知った2年ほど前からだ。
八嶋さんは、「おれの一番は、リョウだよ」と今でも言ってくるが、それも冗談だろう。
恋人ができたと知る少し前から、八嶋さんが時折見せる、あの切なげな表情を見ることがなくなったから。
それでも、俺が八嶋さんを深く傷つけて、踏みにじっていたことに変わりはなく、こうして今も二人で会うことがいいことなのかとも思う。
八嶋さんが、俺を気にかけてくれるように、俺も八嶋さんに対して罪悪感が消えることはなく、アキラとも、先生とも違う意味で、特別な存在ということは確かだった。
だから、きちんと話をしたかったのだ。
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