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気になること
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「…い、てぇ……っ」
「あーはいはい。帰ったら眼科行け、眼科」
雑なあしらい方に労る気もないのかと失望する。
が、そもそもこいつにそんなことを期待する方が間違ってるか、と思い直す。
痛む目を押さえうんうん唸る俺とその様子を見て若干楽しんでいるようにも思えるそいつ。
今時、実際に目潰しやってくる奴がいるなんて思わないだろ、普通。本気でぶち回してやろうかと思ったよ。
…状態が状態なだけになにもできないんだけど。痛すぎて。
そいつなりの優しさなのか、一応転ばないように手を引いてはくれているのだが、どうも人に合わせるということを知らないらしい。
ふらつく俺を気に留める様子もなくぐいぐいと引っ張って歩いていく。
なにも見えない中、それについていくだけでも精一杯なのに、躓いて転びそうになる度にグッと腕を引かれ「鈍くさい」だの「歩くのが遅い」だの、散々な言われようだった。
手を引いてもらっといてなんだけど、正直全然嬉しくない。そいつに頼るしかない現状を仕方なく受け入れているだけだ。
もしも、見ず知らずの人でも今ここに現れてくれたなら、俺は迷わずそっちに行くだろうよ。
「…お前さ、今どんな顔して俺の手引いてんの?」
「はぁ? 無駄口たたいてると突き飛ばすよ」
「……………」
ちょっと気になったから聞いただけなのに…
俺、すげー理不尽だと思うんだけど
結局、立場が弱いのはいつも俺だ。
「……じゃあ、いくつか質問していーですか」
「…どうして?」
「え、それ、言わなきゃいけねーの?」
「…昼休みの条件、覚えてる?
もうすでに実行されてんだけど」
「……まじかよ…」
完全に明日からだと思ってた。
しかも、言われるまで忘れてた。…今日の昼のことだけど。
「はいじゃあ、答えて。
どうして僕に質問したいと思うんですか?」
「することないから」
「ブッブー。はい、やり直し」
「は!? なんでだよ!」
「君がいい加減な答え方するからでしょーが。今のは答えとして認めませーん」
「なっ…」
そんなのありかよ…
引かれた腕を前に項垂れる。
突然足が止まり、目が見えない俺は前を歩くそいつにぶつかった。
「君、なんのために僕があんなことを切り出したかまるで理解してないね?」
「…なんでだよ」
「それをテメーの貧相な頭で考えろっつってんだろ、あぁ?」
「おぐっ……!」
みぞおちに重いパンチが入る。
少しでも痛みを和らげようと体を折り曲げて丸まった。
少し泣きそうになる。
どうして俺にだけこんなに対応が冷たいんだ。絶対に二重人格だろ、こいつ…。
目潰しされて、みぞおちにグーパンチ入れられて、怒られて、本当散々だな、俺。
…あ、でも、目はそろそろ開けられそうだ。
「で? 答えをどーぞ」
「げほっ、おま……俺、吐きそうなんだけど…?」
「え、なに? 聞こえなかった」
そう言って向けられた笑顔に逆らえる気がしなくて、言葉とは別のものを吐き出してしまいそうになるのを唇をくっと噛み締めて堪える。
「…………なんとなく……気になる、から……」
「ふーん。なんで気になるの?」
「……それは…わかんない……」
駄目だ。これ以上喋ったら本気でゲロる。
食堂を逆流してきそうになるものを必死で飲み込み、胃を落ち着かせた。
タイミングを見計らったかのように上からあいつの声が降ってきた。
「…まぁ、今の段階じゃあそれが限界だろうね。
いいよ。なんでもどうぞ」
これは"答え"として受け取ってもらえたって解釈でいいんだろうか…
「その前にさ…もっかい手ぇ貸してくれないか?
……歩くのキツい」
これにはさすがのあいつも黙って支えてくれた。
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