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裏事情2
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「…ねぇ、五月さん?
僕がなんだって?」
「はッ…う!?」
ヒヤリと背筋が凍りそうな声にビクッ!と体が跳ねる。
後ろでガタン、と席に着く音がした。
…見なくてもわかる、汐音くんだ。
「…いつまで突っ立ってる気? 座りなよ」
「そ、そうだね……うん」
どうしよう…もう、帰りたい…
本気で30秒前の自分を呪いたい なんで汐音くんの名前を叫んだの、私
「……………」
「……………」
「……………」
「……あの、なに…?」
「見てちゃ悪いの?」
「悪い、とかじゃなくて…き、気まずいです……」
「なんで。やましいことでもしたの?
手紙を机に戻してくれたこと以外にもなにかしてくれたの?」
「なんにもしてないよ…。というか、なんで私責められてるの? 責められてるよね、おかしくない?」
「は、どこが?」
せめてもの抵抗のつもりで核心をついたのにバッサリと切られてしまった。
随分と呆気ない。私が怖くてそれ以上踏み込めないだけなんだけど。
「瀬良さんとなに話してたの?」
「えっ…」
なんでだろう、聞かれた瞬間、なぜかそれがいけないことだったかのように思えて一瞬言葉に詰まってしまった。
余計に汐音くんを苛つかせてしまうだけだとわかってはいるんだけれど…つくづく損な体質というか性格というか、私が。受け身、なんだよね、すべてが。
案の定、汐音くんは言葉を詰まらせた私を見て"言いたくない"と判断したのか、だんだんとあの時のように苛立ちを露わにしていく。その禍々しく纏う空気だけで失神できそうな気がした。
いや、できる。もう半分近く意識飛んでるもの。
「…たく、なんなんだよ。どいつもこいつも」
「ぅ…あ、の……?」
気だるそうに持ち上げられた体が目の前でゆらりと揺れ、反射的に身を引いた。
その動作一つとっても汐音くんにはただの苛つく材料でしかないみたいで、頭上からはいつもの舌打ちが降ってくる。
…なんか、こんな状況でもどこか妙に冷静な自分がいる
慣れてきた、ってことなのかな? それはそれで怖いな…
「えっ、ちょ、どこに行くの?!」
「どこだっていいだろ。五月さんには関係な──」
「そう言って、また私に面倒事押しつける気でしょ!
汐音くんがサボるって言っていなくなった後、先生に問い詰められて散々だったんだからっ!」
「そんなの保健室に行ったって言えば済む話じゃないの」
「汐音くんいつも保健室にいないじゃない!」
「じゃあ他になにか適当な理由でもこじつけといてよ」
ああ言えばこう言う
いちいち突っかかってる私も私だけど、汐音くんも大概だと思う。それより、恐怖心にも勝る私の迷惑回避行動に拍手喝采を浴びせたい。
「あのさぁ…そんなに嫌なら、五月さんもサボれば」
「な、なに言って……」
「言っとくけど、僕の邪魔だけはしないでよ。
…それも嫌なら今後一切、なにも、僕に口出ししないで」
「……………」
一方的に突きつけられた言葉に返す言葉も失った。
…なに、それ…
当の本人は何事もなかったかのように背中を向け、スタスタと教室を出て行く。
時計は2分もしないうちに本鈴が鳴ることを告げている。つまり、悩むほどの時間的余裕などない。
「…もうっ、知らない!」
結局、覚悟を決めて汐音くんの後を追って席を立った。
なんでみんな、揃いも揃って時間ギリギリに事を起こすのが好きなんだろう
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