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取り引き
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「い、や、だ」
「……………」
まぁ、多少の躊躇いとか拒絶もあるかな、とは思ってたけど…
そこまでハッキリ言っちゃう?
帆奏ちゃん泣いちゃうよ?
「…下の名前で呼ぶな」
ああ、なんだ そういうことね
「…健気だねぇ」
「うるせーよ」
無防備に向けられた背中にそんな言葉を吐かれるとゾクゾクする。どうしても簡単には折れてくれないその態度が余計にあたしを煽るんだ。
もっと弄って、とことんまで追い詰めて、そうしたら、その先きみはどんな反応を見せてくれるんだろう。
上手く被れていない仮面の下でどれだけ崩れていく顔を見られるんだろうね?
「とりあえずさ、菅野クンはどうしたいの?」
「…俺、は」
「要するに、菅野クンは汐音にきちんと向き合ってほしいんでしょ?
あたし、協力するけど?」
「…いや、でも…」
「あ、言い訳はナシね」
多分、菅野クンは迷ってる
詳しい内情まではわからないけど、きっと、菅野クン自身、あたしの知らない"なにか"が引っかかってて答えが出せないんだ
つまり、それがあたしの目論見を邪魔してる
だったらすることは一つ
菅野クンの中に残るわだかまりを取り除いてやればいい
「なににそんな悩んで焦ってるのか知らないけど、迷ってるなら決断すべきじゃないかな?
遅ければ遅いほど、後悔も膨らむと思うけどね」
「……………」
「ま、あたしのことじゃないし、人のことを言えた義理でもないんだけど」
「……………」
「でもね、後悔は少ない方がいいじゃない?
あとでこうだった、ああだった、って言っても時間は戻ってはくれないんだから」
あたしが最後に放った言葉に一瞬、菅野クンの肩がピクッと動いた気がした。
…もう少しかな
「あたし、こう見えてもかなりの情報通だし、役に立てることもきっとあると思うよ」
「……………」
「今は必要ないかもしれないけど、先のことはわかんないじゃん?」
──ここでもうひと押し
「自分の力だけじゃどうしようもないって感じたなら、いつでも頼ってよ。力になるから」
種はまいた
あとは菅野クンがどう思い、どう決断するか、だ
だけど、それも答えはすぐ目の前だろう
それじゃあ、と言って空き缶を片手にひらひらと手を振る。
…ああ、今からニヤニヤが止まらない。
「…待てよ」
──ほら来た…
「ん?」
あくまであたしは知らないふり。
菅野クンの口から語られる言葉を聞きたいから。
「……頼む。協力、してくれ…」
………ほら、ね 堕ちた……
口角が上がるのを抑えられなかった。
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