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怒ってる理由
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終礼時のホームルームが嫌に長く感じて、これから瀬良に会いに行かなければならないのかと考えると、足が鉛のように重たく感じた。
その前に、汐音に一緒に帰れないことを伝えなければならないのだが。
隣の教室前まで来てため息が漏れた。
「汐音、いるか…──うおっ!?」
扉を開けた瞬間、出てきた人物にぐいっと腕を引っ張られた。
予想もしてなかったことに驚いてふらつく。
「あ…? 汐音?」
「…ちょっと来て」
「ちょ、ちょ、待てって!とりあえず前向かせろよ、後ろ向きのまま連れてくな!おい!?」
抗議の声も虚しく届かず、されるがまま資料室まで連行される。
室内に無理やり押し込まれてすぐ、胸ぐらを掴まれて背中を壁に押しつけられた。
………なにこれ
「いて…おい、どういうことだよ、汐音。怒るぞ」
「うっさいな。君のせいだろ」
「あのな、毎回毎回なにかある度に俺のせいにするのいい加減止めろよ」
「……………」
今度はだんまりか…
なんで怒ってるんだ
なんでそんなにむくれた顔でこっちを睨んでるんだ
さっぱりわからん
「……………」
「……………」
「……………」
「…………君が……………」
「……俺が?」
「………君が、……悪いんだよ…………」
「だからなんでだ」
「……………」
「……………」
先程まではあれだけ強気に怒りの矛先を向けられていた筈なのに、理由を促すとなぜか急にしおらしくなってどんどん頭が垂れ下がっていく。だけど、胸ぐらを掴んだ手は少しも緩めてはくれない。
…なんか余計なことで悩んだりしてんのかな
てか、それ、本当に俺が原因なのか? "そこにあったから"みたいな感覚で俺に当たられただけ、とか…十分あり得るぞ
「…なにも用がないんなら俺、帰るけど……」
「…一緒に帰る」
「あー…いや、今日はちょっと…。他の奴と待ち合わせがあって」
「…今までそんなことなかったのに」
「悪いな。また明日に──」
「………そんなに僕には言えない相手?
後ろめたい気持ちがあるから?
それとも──遠慮してるの?」
「いや、それは…」
「……君が言わないんなら、僕が当ててあげようか。それ、瀬良さんだろ」
不意に耳に入ってきた名前に俺の動きがピタリと止まった。
「なんで…」
「……やっぱり」
汐音は俺の反応を見ると露骨に嫌そうな顔をした。今にもチッ、って舌打ちが聞こえてきそうな感じだ。
…やっぱり、ってなんだ どういうことだよ、どこかで瀬良と話してたのを見てたってことか?
それとも、汐音が瀬良と会った──?
なんにせよ、相談していた内容を汐音が知ればきっと呆れるに違いない。
「まだくだらないことにこだわって」とか言われるに決まってる。汐音にとって、今の俺の行動は不愉快極まりないはずだから。
「…お前に関係ないだろ」
気づいたらそう言っていた。
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