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【番外編】11.11
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「なあ、汐音。今日って"ポッキーの日"って言うらしいぞ」
「……知ってるよ」
かおからの突然の振りには慣れてきたもんだったけど、この話題が今くるとは思ってなかった。
今朝からクラスの女子達がうるさく騒いでたから、かおが興味を示す前に話を逸らしてきたのに。
…真正面から来やがったよ
どこからその情報拾って来たんだ
「でさ、なんかポッキー使ってゲームみたいなのするんだって?」
「…なんで疑問形?」
てゆーか、もしかしてかお…ポッキーゲームも知らないの?
「瀬良に聞いたんだ。ポッキーもらって、詳しいことは汐音に教えてもらえって言うからさ」
「……………」
……あのクソ女
僅かながら殺意が湧いてくる。
当の本人は純粋な瞳の奥でキラキラしながらポッキーの箱を見つめ「これ使って何すんの?」と聞いてくる。
「……はぁ。二人でポッキーの両端を片方ずつくわえて食べていくんだよ。で、先に口を離した方が負けなの。
それがポッキーゲーム」
「ふーん…」
「…なに、その目は。僕はやらないからね」
「なんでだよ。面白そうだろ」
「うっさいな、僕はチョコが嫌いなんだよ」
「なんだそれ。チョコ嫌いとか意味わかんねー奴だな」
「ふん、悪かったね。…とりあえず、もらったんなら食べれば?」
あの女からのもらい物ってことがひどく気に入らないけど
興味がないわけじゃない。
チョコが嫌いなのは本当だし。でも、その話題を遠ざけてきたのはそれだけが理由じゃない。
「……………」
「……………」
「………もう、諦めなよ……」
……正直、めちゃくちゃ恥ずかしい
その気持ちが一番大きいかもしれない。
だって、数秒間だけだとしてもかおと至近距離で見つめ合わなくちゃいけない。普段前髪を鬱陶しいくらい伸ばして顔を隠してるのも、他人となかなか視線を合わせられないからだ。
加えて、どちらかがギブアップしない限りキスは避けられない。そんな状況下で平静を装って普段通りの自分を保ってなんていられるだろうか。
…無理でしょ
「ああ、じゃあ、汐音はこっちのチョコがついてない方くわえてろよ。そしたら食えるだろ」
「は、はぁ? なに言ってんの、それじゃ僕もチョコがある方食べ進めなきゃいけないじゃない」
「いや、お前はくわえたままでいいよ。俺が食ってく」
「あ、うん…じゃなくて、
やらないって言ってるでしょ!ふざけんなよ!」
「ハイハイ。大人しく先っぽ食ってろ」
「ん"ー!!」
よほどやりたかったのか、かおは取り出したポッキーを強引に僕の口の中に突っ込んできた。
確かに、これだと僕はチョコを食べなくていい
いい……けど、待ってよ それって、かおが食べてるのをあんな間近で待ってなくちゃいけないってことだろ
僕かかおのどっちかが口を離すか、キスに至るまでずっと──…
…死ぬかも
「…口離すなよ」
「は、はなふぁないよっ…」
かおが反対側の端をカリ、と噛むとその振動が直に唇に伝わってなんとも言えない複雑な気持ちになる。
意識すればするほど顔が火照ってきて、視線が泳ぐ。
…早く、早く終われっ……
耐え切れず、ぎゅうっと固く閉じていた瞼をそっと開けると、ちょうど半分ほどのところまで食べ進んでいたかおと目が合った。
あ………や、ば……いかも………っ
反射的に体の重心が後退する。
──パキンッ
乾いた音が響き、残りのポッキーは真っ二つに折れてしまった。
「あー…もうちょっとだったのに」
「……………」
「なぁ、これって勝敗はどうなんの?」
「………ひ、引き分けじゃない?」
「なんだ引き分けか」
「……………」
一瞬、呑み込まれるかと思った
他人に、あんなに真っ直ぐに見つめられるなんて…
……やっぱり慣れない
「勝ったら汐音の方からもう一回キスしてもらおうと思ってたんだけどなぁ」
「!?」
「だから、またやろうな」
……ほんとに勘弁してくれ
「…春野、あたし達もポッキーゲームする?」
「軸がお麩のやつならいいよ」
「アンタ絶対に離さない気でしょ」
end
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