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『親御さんとの手続きもあるからまだ確定してるわけじゃないけど──…』
あくまでも可能性の話だから
そう聞いたのを最後に、俺は職員室を飛び出していた。
──会いたい、会わなければ
会ってなにを話そう?
聞いた話は本当なんだろうか?
聞きたいことも山ほどある
なんで俺を避けるのか、あのさようならの言葉の真意は? お前の気持ちは?
ぐちゃぐちゃになった頭で、足はただひたすらに汐音を追いかける。
「──ッは……、汐音!!」
廊下の角を曲がると見えた背中に声を張り上げる。
ゆっくりとした足取りで何度呼びかけても振り返らない汐音に、まるで俺の声が聞こえてないみたいに思えて。その態度からはなんの感情も伝わってこない。
若干イラっとして、回り込んで行く手を塞ぐとようやく立ち止まってくれた。
「…なんでなにも話してくれない」
「……………」
「今度はお前が答える番だ」
肩で息をしながら詰め寄った。
だけど、汐音は顔を上げようともしない。代わりに、スッと一歩身を引いて静かに壁にもたれかかった。
「…アザミの花、綺麗だったでしょう?」
ふっと息を漏らすように口を開いた。
「あれ、ていうか今までの全部、うちで育ててる花なんだよ」
「……………」
「温室とか比較的気候が涼しいところとかでも色々育ててるから、一年中花に囲まれてるんだ」
「……………」
「…まったく、無様だよね。
自分の生きたい季節に生きたいようにさせてもらえず、人の手によって管理されて。種が埋められたその時から生きられる世界は決められてる。
鉢植えなら鉢の中で、花壇なら仕切られた煉瓦の中で、庭に植えられたのなら敷地内で、ね」
「俺は、」
「……メッセージ、伝えたよね?」
──公園にあったあの文字だろ?
「……ああ」
「だったらもう、わかってるでしょ?」
──わからねえよ…
「……なんでだよ、意味わかんねーよ…。あんなの、突然……納得できるわけないだろ」
「……………」
「俺が原因…なのか?」
「理由の一つではあるけど、君のせいじゃないよ」
──なら、どうして…
「初めから思ってた。このままじゃいけないってことはわかってたんだ。
…僕は我が儘だから。全部僕のせいでいいから、忘れてくれて構わないから、」
やっとのことで顔を上げたお前は目が赤く充血するほど感情を堪えていて、精一杯の笑顔なんだろうそれはひどく歪んでいた。
「…………もう、僕に近づくな……………」
ハッキリと拒絶の言葉を口にしたそいつは俺の側を離れた。
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