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『汐音』
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「ま、あたしには関係ないけど。誰か待ってんでしょ? 呼ぼうか?」
「いや、俺は…そうじゃなくて…」
曖昧で歯切れの悪い返事になにを思ったのか、その人は目を細めてニヤリと笑った。
「ははーん。さてはきみ、春野狙いか」
「……は?」
春野狙い?
…って、なんの話だ
「途絶えないもんだね〜。春野もあたしに面倒事押しつけないで欲しいんだけどなぁ」
「……………」
要するに、どうやら俺はその『春野』って子に告白しに来た人だと思われているらしい。
放っておいたら勝手な妄想でいくらでも話が広がっていきそうだったから適当なところで話を切らせた。
あれだけ好き放題話していたのに、誤解だったとわかると自分の妄言を恥じるどころか「なんだ、違うの」とあっさりと身を引いたところから察するに、あまり興味のないことだったようだ。
その割にはよく喋って、やけに口が達者だなと思う。
「つーか、あんた…俺を見ても逃げたりしないんだな」
「え? なんで逃げるのさ」
「いや、怖くねーのかと思って…」
単純に不思議に思った。
今までは見た目が怖いからと色んな人からずっと避けられてきたのに、あまりにも自然に俺に接してくるから。
すると、大きな目をぱちぱちさせ「ああ」と口を開いた。
「身長とか隈とか、どうせ見た目の問題でしょ? そんなのあたしにとってはなんの脅しにもならないけど」
「そ、うなのか…?」
「だって、うちのクラスのいいんちょーのが何万倍も怖いもん。機嫌を損ねたら即鉄拳制裁!」
「……………」
「ねっ、怖いでしょ?」
それを平然とした顔で言ってのけるこいつの神経を疑いたい…
この様子だと常習犯だろうな 懲りない奴
「そのいいんちょー様でも敵わないって言ったら『汐音』くらいのもんかなぁ〜?」
──『汐音』…
その名前に聞き覚えがあるような気がして、だけど知り合いにそんな名前の人がいるわけでもなく。
誰だろう、と首を傾げる。
「えっ、知らない?
あぁーでも、男子ならそういう人もいるかぁ…」
眉間にしわを寄せて訝しげに見ていると、その人は新しい玩具を見つけた子供のような顔で「『汐音』はね──」と切り出した。
──"植物と動物くらいしか興味のない、偏屈頑固な爆弾抱えた王子サマだよ"──
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