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しばらく時間が止まったように静寂が俺達を包んだ。
「なに、知り合いだったの。二人」
「……………」
「……………」
少なくとも俺は、そうではない…と思う。
そりゃあ疑いもしたけど、そんな筈はないんだ。だって、俺は身近にこんな人がいるのを知らない。
なのに、俺はなにをやってるんだ…
対して、相手からはなんの反応もないからこちらも対応に困る。
この握った手はどうすればいいんだ、「ごめん、間違えたっ☆」とでも言えばいいのか
…いや、間違ってないし そもそもなにを間違えたんだって話だし
そうだ、普通に………普通ってなんだっけ
つか、こんなことを考えてる自分が痛々しくて…馬鹿じゃないのか、俺…今の自分を呪いたい
「いや、その……悪い。人違い…だと思う」
「……………」
「…いきなり腕掴んで引き留めたりして悪かったな」
次からはもっとよく考えてから行動しよう…
パッと手を離し、なにも言わずに背を向けた。
数歩歩いたところで『汐音』が声を張り上げた。
「着てるよ」
その声にピタリと足が止まる。
「……え……?」
「だから、ピンクのカーディガン」
言いながら俺につかつかと歩み寄ってくる。
目の前に立たれたその人を前に息が止まってしまいそうだった。
──じゃあ、本当に…?
「ただね、そんな色のカーディガンなら女子でも着てる。
僕をその女と間違えたんだとしたらいい迷惑だね。胸くそ悪い」
「なっ…」
「それと、男口説くならもう少しマシな言い方考えれば?
君の言葉、全っ然響かないから」
最早言葉を失って唖然とする俺を残し、それじゃあ、と何事もなかったかのようにその人はいなくなった。
「──くっ…ぶふーっ!も、もう無理っ我慢できない…可笑しすぎる!! ははははは!」
「…瀬良、てめー…」
ヒィヒィと涙を流しながら笑っている瀬良を横目でじろりと睨む。
「だ…だって…コントかきみら!
『なあ、お前、ピンクのカーディガン着てなかったか?』って…くくっ」
「…おいやめろ」
「『男口説くならもう少しマシな言い方考えれば?』
──ぶはははは!! 傑作!!www」
「だからやめろって!」
ものすごい恥だ
だけど、もうこの際あいつになにを言われたかなんてどうでもいい
ただ一つ言えることは──
「俺があんな奴と知り合いなわけがあるかっ!!」
それだけは断じて、認 め な い !!
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