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その日部活は散々だった。
もうすぐコンクールなのに・・・。絵が全然まとまらない。
感情に疎い幸にも今日は心配される始末・・。
俺はパレットの上の絵の具をぐちゃぐちゃとかき混ぜた。
外すっかり暗くなってしまっている。見えるのは野球部のナイター照明だけだ。
時計を見ると20時を回っている。
幸はもう帰った。っていうか帰した。
あんまり遅くまで残していると、絹谷に何を言われるかわかったもんではない。
(もう今日帰ろう・・。)
モヤモヤとした感情のまま俺は片付け始めた。
昇降口を抜けて校門へ向かっているとちょうど運動部との帰宅時間と重なってしまった。
俺は運動部を避けるように少し距離を取った。
「市浦!今帰りか?」
「絹谷・・・」
野球部もちょうど部活が終わったらしくゾロゾロとこちらへ歩いてくる。
「ずいぶん遅いんだな・・・あ・・幸は・・幸はどこだ!?」
「幸ならもう帰ったよ・・ってか帰らせたよ・・」
「そうかよかった・・」
心底安心した顔の絹谷。コイツも大外だな・・・。
「なら、俺帰るから。お疲れ~」
ひらひらと右手を挙げる。
そしたら・・・
「市浦先輩!俺と帰りませんか?!」
「は?」
後ろから声をかけてきたのはモヤモヤの原因林田だった。
「なんで?」
「いや・・・先輩と同じ方向だと思うんで」
「俺Y駅方向だけど・・・」
「俺もっす!」
なんで俺と帰りたいんだ?
意味がわからない・・・・。
「まあ・・別にいいけど・・・」
「マジっすか?!なら俺チャリ持って来ます!」
そう言って林田は駐輪場へ走っていった。
「あいつ必死すぎ・・・」
「は?意味わかんない・・」
クスクスと笑いをこらえるように絹谷は言った。
「なら俺は先に帰るな~」
絹谷はまるで他人事のように言って帰っていった。
(なんなんだよ・・・あいつは・・・)
色々考えていると林田が自転車を引いてこちらへ向かってきた
「おまたせしました先輩。帰りましょう」
「おう・・・」
そうして俺たちは歩き出した。
街頭だけが照らす夜道。二人ならんで歩く。
(おい・・・何か話せよ・・気まずいだろ・・・)
林田は何かを話すわけでもなく、俺の隣を歩いている
カラカラと車輪の回る音だけが聞こえる。
「・・・先輩」
「なんだ?」
急に林田が話しかけてきた
「先輩はなんで、絵を描いてるんですか?」
「・・・なんでって好きだから」
「俺も野球好きです」
「はぁ・・・まあ好きじゃなきゃ高校に入ってあんな厳しい練習にはついていけないだろうな」
それから話が弾み、俺たちの距離は縮まっていった。
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