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小さい秋
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『ちあき!寒くなってきたから、俺んちで遊ぼう!』
『うん!わかった!!』
手を繋いで歩いた、小さな頃の秋の思い出。
今じゃ、そんなもの本当に存在してたのかさえ分からなくなっていた。
ーーーーーーー……
ぼーっとさっきの、いつもより優しくしてきた凌を思い出していた。しかも、結構な人数いる前であいつと関わるという大バカなマネをかまして……。
俺はバカだー!!
頭を抱え、ただひたすらに廊下を歩いていた。
そんな俺に、「おい!千明!!」と我に返してくれたのは隣を歩いていた優だった。
「な、なんだよー」
チラッと優を見ると真剣な顔をしている。
「やっぱ、文化祭の全体代表やれよ。」
「やだよー、あれ(凌)とかあれ(奈々)が俺の見張りしてくるんだぞ?それになぁー、俺はそーゆーの苦手なの!!」
高校の係り決めの時に、必ず1つはやらなきゃなんない教科係りとか、委員会とかを決める時。
優を誘って、期間限定で忙しい文化祭実行委員に立候補したのはまだ寒さが残る春のことだった。
奈々は、怒っていた。
『真面目にやりなさい!!』と。
凌は、ただ興味なんて無さそうに俺を見ていた。
まるで、
『何やるにもテキトーだな?』
って、言われてるみたいで凌の視線が凄くイヤだった。
俺は、何としてでも無理に2人に近寄ろうとは思わなかった。何故なら、比べられるからだ。
地元の学校と言うこともあり、小学校から一緒の奴もいる。俺たちの関係を良く知っている奴がいるからこそ、近づけば俺とあいつらの差をありありと知らしめられるのだ。
「いやーだってさ、絶対さー爽汰よりもあーゆーの向いてるって!それに、皆も千明の言うこと素直に聞くし。」
「いーや?まぐれじゃね?」
「凌ちゃんと浅川さんの幼馴染みだし!」
「いや……、あれは俺の監視カメラだから……」
「いーや、違うね?監視カメラなんかじゃないよ!ありゃ、千明が可愛くて構ってる感じだよな?2人とも。」
「優……お前の目は節穴か!!そんなわけないだろ!!!」
「ボソ)もうそろそろ凌ちゃんの目線とか気付けないものか……」
「優?なんか言った?」
「うん?いやぁー??べつに?」
慌てたように話を逸らす。
もちろん話は文化祭の実行委員の話だ。
今回は生徒会が文化祭を全面バックアップ体制だ。生徒会のバックには、学級委員会が付いている。
見張りなんてたまったもんじゃない!!
そんな今年の全体代表は副会長の爽汰だ。
「てか、いいのか?そんな風に言って。幼馴染みなんでしょ?爽汰と。」
「いやいや、あいつ見て分かったろ?あいつ……バカなんだ……」
「あいつ人望もねーしよ……」と、遠い目をする優は、実は爽汰に恋をしている。
だが、半分諦めている。
世間の目もあるのも理由はあるだろうが……、
問題は爽汰の天然記念物になり兼ねない中身だからだ。
でも……
「優……」
「?」
「まだ、手が届くならさ?諦めんなよ?」
「っ!お、おう!!」
俺はもう、手に入らないものだから。
まだ近くにあるなら……
諦めて欲しくなんて無いから……。
優の背中をぽんぽんと叩くと、教室へと向って並んで歩いた。
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