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天使と悪魔
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ふかふかのベッド、豪華な食べ物、 立派な洋服、たくさんのオモチャ……
それと引換に、少年は体を差し出した。
正確に言うなら、差し出させざるを得ない状況だった、だ。
彼はスラムにいたのだ。
汚れた石畳の上が寝床、腐りかけのパンが見つかればいい方、ボロボロの服は日に日に黒ずんでいく…そんな日常を彼は送っていた。
ある日、見たことない貴族の男に突然声をかけられた。
『ここから抜け出したくはないかい?』
そう差し出された手。
彼は、エメラルド色の両眼でそれをただ見つめた。
『君に家をあげよう。食べ物も服も全て欲しいものはあげるよ』
甘すぎる誘惑。
それは自分にとって、決していい事ばかりじゃないと本能的に悟った。
『何でも?』
『何でも』
『…で、オレは何をすればいいの?』
彼の言葉に驚いた後、貴族の男はすぐににっこりと笑って、くすんだ琥珀色のボサボサの頭を躊躇なく撫でた。
『賢い子は好きだよ。なに、難しい事はない。君の身体を…私にくれればいい』
『体?内臓でも売るの?』
『ハハハ!そんな事はしないさ!そうだね…慣れればむしろ気持ち良くなる事さ』
その言葉に彼は眉を寄せた。
視線を落とし、数秒の沈黙が流れた後、貴族の男を睨むように見つめて言った。
『……わかった。いいよ』
『ありがとう。君は、ほんとに賢いんだね』
細められた濃紺の瞳を見て、彼は思った。
この人は、天使で、そして悪魔なんだ…と。
差し出された手を取り、彼はスラムを後にした。
振り返りはしなかった。何故ならソコはもう自分の居場所ではなくなったから。
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