アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
執事の思い
-
ゆっくりと上半身を起こし、気絶してしまった主の体を抱きしめるとその柔らかい髪に顔を埋め、短いキスをした。
「少し、イジメ過ぎましたね」
くすりと苦笑を漏らしながら、リチャードは涙と涎の跡を指で拭う。
まだ絹のように滑らかな肌が、指伝いに心地よさを感じさせた。
「私もまだまだ、大人気ないな」
お客人に気持ち良くさせられている彼を、自分ならもっと喘がせ狂わせられるのにと思ってしまうのは毎度のこと。
いつからこの思いを抱き出したのかは定かではないが、確信したのは最近だ。
出来るなら誰にも触れさせず、ずっと傍に、と。
執事として、調教師としてはあるまじき感情。
しかし、それとは反対に彼が見知らぬ男達と交わる時の姿も見ていたいと思う所もあった。
悲痛に泣く姿を客観的に見るのを楽しんでいる自分も確かにいるのだ。
我ながら矛盾していると、自嘲する。
だから彼は、今の段階で結論を出した。
このまま、自分の手の中で見守ると。
腕の中の主の小さな呻き声にハッと我に帰る。
名残惜しげに自身から持ち上げ、浴槽の側に座らせた。
石鹸で洗った後、シャワーで汗やその他の汚れを丁寧に落とし、自身の体も清め終わると未だ目覚めぬ主を優しく抱き抱え、浴室を後にした。
白いふわふわのタオルで身体を拭いている最中、小さな双眸が開く。
「お目覚めですか?」
「リチャー、ド…」
「申し訳ございません。無茶をさせてしまいましたね」
「あ、いや…うん、ちょっと、刺激強すぎた」
「次はもう少し手加減致します」
そう意地悪く笑うと、ピンク色の頬を膨らませて言った。
「お前の手加減は当てにならない」
拗ねて顔を背ける主に、リチャードは悪びれることなく笑った。
「では、慣れるまで繰り返しましょう。アレが出来るようになれば、きっとさらに顧客が増えますよ」
「…!ほ、ほんとごめんなさい!!言い過ぎました!!」
「謝らなくてもいいですよ。別に怒ってはいません」
そういう笑顔が一番怖いとエリックは引き攣った顔のまま思った。
当のリチャード本人は、その事を知ってか知らずか笑みを濃くして囁く。
「本当にさっきのことは悪かったと思っています。ですが、あれが私の本気だとは思わないでくださいね」
エリックはアレより凄い事が出来るのかと青ざめる。
この執事としては申し分の無い人物は、調教師となると人が変わるのを除けば完璧なのにと恨めしげな視線を投げた。
しかし、その程度の視線では彼の笑顔は揺るがない。
おしゃべりをしている間も手は止めず、エリックと自身の身支度をきちっと終え、脱衣所の整頓までし終わると、カチャリとドアを開けた。
「では、帰りましょう。辛いようであれば抱いてお運びしますが」
皮肉にムッとしながら、差し出された手をピシャリと払い除け、幼い主は毅然と自分で歩き出す。
「さっさと帰る!そして寝る!明日はせっかくの休みだからな」
「かしこまりました」
無駄にしてたまるかと息巻く背中について、彼もまた歩き出した。
その強さもまた愛おしい、と目を細めながら。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
7 / 23