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優しい?優しくない?
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心地よい揺れと服越しに伝わる体温に、エリックはその身をただ預けていた。
今だ自由にならない体を大事に抱き抱えた執事の顔は晴れない。
口を噤んだまま馬車へと歩みを進めていたが、紫のテントを越えたあたりで呟くように言葉が漏れる。
「…今回は申し訳ありませんでした。私の不注意です」
前を見ていた瞳がまだどこか虚ろな双眸に向けて謝罪すると、腕の中の主は首を振った。
「オレの方こそごめん。かなり浮かれていたみたいだ」
眉尻を下げながら謝ると、そうですねとの同意が返ってきた。
「これで少しは好奇心を抑えていただけると助かります。この世界は、あなたに優しくはないのですから」
執事の言葉に、エリックはその顔を見上げた。灰色と翠の視線がぶつかる。
じゃあ、リチャードが優しいのは世界の代わりなの…?
問いかけは、何故か声にならなくて。
その代わりに、なんでもないと囁くような声が漏れただけだった。
その理由はまだ体の自由がきかないからだと結論ずけ、馴染んだ肩に頭を預けて再び目瞼を下ろす。
「おやすみなさい…と言いたいところですが、あのピエロに何をされたのですか?」
じいっと見下ろす目に鋭い光が宿る。
執事の質問に、エリックは目を閉じたまま気丈に答えた。
「キスと強制的にフェラさせられただけだ。大したことない」
「十分されているではないですか。…失礼します」
ぴたりと歩みを止めたかと思うと、唇を奪われた。
舌先で上唇そして下唇を丁寧に舐めあげられると、ふるりと萎えていた快感が湧き上がる。
苦しげに息を吐くが、執拗な舌は動きを止めない。
いつもより薄い抵抗をいい事に、舌はさらに奥へと入る。
舌を絡めとり、吸い上げ、口内をなぞる。
溢れた唾液ごと全て零さず舐め取り、数分に渡るキスは終わりを告げた。
息が上がり快感に目を潤ませた表情に満足そうに微笑む。
「少しは消毒になりましたか?」
「バカ…!」
ここ外なのにと顔を赤くする主に、すみませんと謝りながら馬車へと歩き始めた。
「では、今度こそおやすみなさいませ。良い夢を」
聞きなれたはずの声がとても懐かしくて安心して、エリックは泣いてしまいたい衝動を強引に夢の中へと持っていくことにした。
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