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執事の不安
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「本当に、よろしいのですか?」
身支度を手伝いながら背後の執事が心配そうに問う。
「大丈夫。体ももうなんともないし」
昨夜、屋敷に帰ってすぐベッドへ寝かされ、お抱えの医師に調べてもらった結果、ただの弛緩剤だと告げられた。
寝て起きれば薬は抜けるはずだと言われ、二人(特にリチャード)は胸を撫で下ろす。
執事に抱えられたままお風呂を済まし、清潔な身体と気持ちでベッドへと横になったところでお話がと固い声が告げた。
「明日のお仕事ですが、お休みになられてはいかがでしょうか。幸い一件だけで、しかもお相手はブラウン様です。あの方ならば事情を説明すれば分かってくださるかと」
ほぼ未遂とはいえ、あんなことがあった後だ。
彼の調教師である前に、執事という立場から主の体調と心を気遣う必要がある。
しかし、そんな執事の気持ちを知ってか知らずか、エリックは枕に頭を沈めながら首をゆっくり横に振った。
「それにあの人なら無茶なことはしないし」
だから心配しなくていいとゆっくり瞼を下ろす主に、リチャードは表情を曇らせた。
そして瞳が完全に閉じて寝息を確認してから、おやすみなさいませと一礼し、ベッドサイドのランプを消した。
「出来れば、あの方には……」
呟いて眉間にシワを寄せる。しかしすぐに首を振り、側に置いていた手持ちのランプを片手に軽く会釈をして部屋を後にした。
そして、翌朝の例の会話に戻るのだ。
「ブラウン様はお父様のご友人だし、それにお客様は大切にしろって言い聞かせて来たのはリチャードだろ」
「…そうですね。失礼いたしました」
「でも、ありがとう。その気持ちだけでも嬉しいよ」
首元に紺のリボンを結んでいた彼に、にっと笑ってみせるエリックに、控えめな笑みで答える。
身支度を終えると踵を返し、屋敷の外で待つ馬車へと小さな足を踏み出した。
「行くぞ」
子供にしては強く見える背中に、こんな時だけその気丈さを恨めしく思う自分をリチャードはひどく情けなく思った。
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