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お茶会の後に
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エリック達の住まう街で一二を争う豪邸の持ち主が、今日のお相手であるブラウン伯爵だ。
豪奢なライオンのレリーフのドアノックを打ち鳴らすと、直ぐに若い執事が扉を開けた。
エントランスに入ると、焦げ茶色の髪と青色の瞳の壮年の男性が笑顔で出迎える。
「いらっしゃい。久しぶりだね、エリック」
「こんにちは、ブラウン様。お元気そうでなによりです」
床に片膝をついて手を広げるブラウンに駆け寄ると、その首に抱きついた。
これが二人のいつもの挨拶だ。
「今日はスコーンを焼いてもらったんだよ。季節のジャムもある。確か好物だったよね」
「はい、大好きです」
手を繋いで部屋へと向かう背中はとても仲が良さそうに見える。
実際夜会などに義父と共に呼ばれる程の仲で、お互いの性格の穏やかさから二人は自然とお茶会をする間柄になっていた。
しかしエリックとは裏腹に、執事のリチャードの心は穏やかとは遠いところにあった。
近くにあるはずの背中が遠くに見えるほど、胸はざわざわと荒れていた。
だが、顔には微笑みを張り付けた。執事である自分の気分でこの雰囲気を壊すことは許されない。
それでも、早くこの仕事が終わることを切に願わずにはいられなかった。
「このジャム美味しいです。スコーンに良く合うので食べ過ぎそう」
「気に入ったのならあとで土産として渡してあげるよ。メイドに言っておこう」
ありがとうございますと無邪気に笑う声と共に、終始和やかな空気のまま茶会は進む。
エリックの傍で紅茶を注ぐリチャードは、純粋に楽しむ主を見て幾分か心が落ち着いていた。
それから一時間ほど雑談した後、時計を見たブラウンが目を細めて言った。
「そろそろお腹のスコーンも消化したころかな」
「あ、すみません…!ついしゃべりすぎましたね」
そう言って慌てて腰を浮かすエリックの椅子を引き終わると、リチャードは一歩後ろへ下がる。
「では、私は部屋の外におります。終わりましたらお呼びください」
深く一礼し、そして素早く部屋を後にした。
パタンとしまった扉を見届け、ブラウンは手を差し出す。
「では、行こうか」
その手の平にまだ幼い手を重ねる。
そして二人は天蓋付きのベッドへとゆっくり向かった。
この瞬間さえも、楽しむように。
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