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出来損ないの称号
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「う〜、疲れたぁ〜。」
さすがにF30というサイズは大きい。
塗るのにも時間かかるし、腕もそれだけ大きく動かすことになる。
俺は、凝り固まった肩を解そうと背伸びをした。
「終わったの?隼人?」
「まあね。とりあえず、今日のところはね。」
大体の固有色をのせ、雰囲気が出始めてるところだった。
「そっか、じゃあ帰ろ?」
そう言って、ルイは、俺のバックまで担いで部室の外に出ようとする。
慌てて俺は、追いかけるが…
「待てよ…って、うわ⁉︎」
急に人影が現れ、俺の道を塞ぐ。
「待ってください!私も…あの…一緒に帰っていいですか?」
確か、同じ一年生で他のクラスの女子。
あまり目立たないタイプだなと思ったことは記憶している。
どうやら、ルイに気があるようだ。
こりゃ、また面倒な…
俺は渋い顔をする。
同じ部活だし邪険には出来ないけど…
かと言って、こいつだけ特別扱いしたらどうなることやら…
たぶん、いじめとかの原因になるだろうな…
俺は、様子を見守る。
そして、ルイの出した答えは…
「別にいいんだけど…隼人と帰りのコンビニでエロ本買うつもりだったんだけど、それでもいいなら…」
どうしようもない断り方に、俺ですら唖然とする。
エロ本って………
もはや、断ったかさえわからない解答。
だが、効果は覿面(てきめん)だったようで、女子は顔を真っ赤にしながら足早に逃げて行ってしまった。
それが、恥ずかしさからなのか怒りからなのかわからないけど…
「おい、ルイ。俺、エロ本買うなんて約束してねぇぞ。」
「うん、知ってる。だけど、もし、俺が変態だなんて噂が立てば少しは解消されるかなぁって思ってさ。」
ほう。
良く考えたと思う。
だけど、人間の噂なんかテキトーなもので都合の悪いものは切り落とされるもので…
結果、たぶん俺だけが変態らしいという噂になるんだろうな。
俺は実際、そういうのにあまり興味はないのだけど…
俺は、今日何度目かのため息をついた。
「そうなれば、いいけど…」
「まあ、ならなくても、時間たったらファンクラブみたいなのが出来て、不可侵的な感じになるでしょ?たぶん。」
中学では、そうだった。
入学から一ヶ月ほど経った頃から、ルイのファンクラブができて、ラブレターなどが激減したのだ。
まあ、盗撮されたり、ものがなくなり易かったりと不便ではあったが今程、時間に縛られることはなかった。
告白やらラブレターがないだけでも、負担は大きく軽減される。
でも…
「なんか、そういうこと平気で言えるお前って、やっぱりすげぇわ…」
「えへへ。照れるなぁ。」
ルイは頭をかいて、真面目に照れる。
「照れるな!つか、褒めてないから!逆に皮肉だからね、今の⁉︎」
そう、戯れながら帰ろうと校門をでると…、
「おい、待て。一年。」
トーンの低い声。
振り向くとそこには、夜鳥先輩がいた。
夜鳥先輩は、校門に寄りかかり、まるで俺らを待ち構えていたように話しかけてきた。
「なんか、用事ですか?夜鳥先輩?」
ルイは、俺を守るかのように俺と先輩の間に入る。
警戒しているのがよく分かる。
確かにさっきも言ってたしな…
「用事…そうだな。一緒に来てもらおうか。もちろん、そいつも一緒に。」
俺のほうを指さす。
なんか、嫌な感じ…
絵を描いてる時とは、全然雰囲気が違う。
禍々しいというか、嫌悪感、殺気みたいなものが身体から滲み出ていた。
それは、ルイも感じとっているのか張り詰めた空気が漂う。
「来い。」
そう言うと、先輩はさっさと歩いていく。
俺らはアイコンタクトで行くことを確認しあい、その背中を追っていった…
先輩はある場所でピタリと足を止める。
そこは、ひと気の少ない路地裏だった。
ゴミが散乱し、異臭を漂わせている。
これは、まずいことになったな…
喧嘩になっても、すぐに逃げることは出来ないし、人も呼べないし…
「先輩、そろそろなんでこんなところに連れてきたのか教えてくれませんか?」
ルイは、あくまでも普通を装い話しかける。
「戯言を…」
今なんて?
質問しようと思った瞬間には、先輩は霞の如く消えていた。
その代わりに、俺の襟もとを誰かによって、大きく広げられていた。
「な⁉︎」
「隼人!」
ルイは、即座に俺の手を引いて、後ろに隠す。
「ふん…お前も所詮は獣か…」
俺の襟ははだけ、昨日のルイの痕が露わとなっていた。
なんなんだよ⁉︎
この先輩⁉︎
意味がわからないまま、取り乱す。
そして、先輩は胸元から何かを出したと思うとそれは刃渡り20cmほどの銀色に輝くナイフだった。
やばいやばいやばい!
とにかくやばい!
声にならない恐怖が襲った。
何がどうなってるのかわからない…
かと言って、逃げようとしてもさっきの瞬間で俺たちの退路は絶たれてしまっていたのだ。
どうすれば…
ルイは、俺の手をそっと握る。
それは、任せてとでも言っているようだった。
「俺のこと獣って言いますけど、先輩の瞬間的な移動…あれは、吸血鬼の能力のフリットですよね?じゃあ、先輩も吸血鬼なんでしょ?」
え?
どういうこと?
「俺をお前らと一緒にするな!」
大きくナイフを振り上げる先輩に、ルイは軽々とそれを避け、足払いまでする。
そして、大きくバランスを崩した先輩から、フードがはずれその容姿が月明かりの下に露わとなった。
真っ黒な髪に青い瞳。
それにルイほどではないかもしれないが、相当整った顔立ちをしていた。
「もしかして…ハーフ?」
ルイは、思い当たる節があるようだ…
その顔をジッと凝視する。
「うるさい…」
先ほどにも増して、低い声。
まさに、獣の威嚇のような声だった。
だけど、ルイは、先輩の刃物に力を入れる瞬間を見逃さなかった。
先輩がナイフを振り上げようとした瞬間…
いつの間にか先輩の後ろに立っていたルイは、後ろから先輩を押し倒し、刃物を持っている手をギリギリと締め上げた。
「やっぱり、反応が少し遅いですね…ハーフの貴方が何の用ですか。」
口調はいつもと変わらないが、あからさまに怒っているのはわかった。
「純血だからって、調子乗るな…」
「俺、そういうの大嫌いなんですよ。吸血鬼だから。人間だからとか。」
さらに、腕を締め上げる。
先輩は苦しそうに顔を歪める。
「お前さえ殺せば…俺は認めてもらえるんだ!」
「そうすれば、教会の人たちに認めてもらえると?そして、出来損ないなどという肩書きから抜けられると?」
先輩は、驚いたような顔をした。
でも、なんでルイがそれを?
その答えはすぐに出た。
「ナイフの柄。その模様、対吸血鬼の教会の紋章ですよね?あと、そこでハーフの吸血鬼のことを出来損ないと呼んでいると聞いたことはありますから。」
全てが図星だったようで、先輩は苦々しそうな顔をした。
「うるさい…お前に何が分かるんだ…」
「はい。俺は、何も分かりませんよ。だって、話だってロクに聞いてないですし、さっきのだって、ただの憶測でしかありません。だけど、俺だって何もしていないのに殺される気なんて毛頭ありません。なので…」
ルイは、先輩の手を離し後ろから立ち退いた。
「取り引きしましょう。」
ルイは、突拍子もないことを言い出した。
確かに話し合いで決まれば、それが一番良いが今の状況でほぼ無理だと思うのだが…
俺は、ただ黙って2人の様子を見守るしか出来なかった…………
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