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光におちる影
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「おはよう、隼人。今日は寝坊しなかったんだね。」
しっかりと身支度を終えたルイが俺の家の前に立っていた。
そして2人並んで歩き始める。
俺は、恨めしそうにルイを見上げた。
「どうしたの?」
ルイは、少し腰を曲げて俺の顔を覗く。
この……
「どうしたの?じゃねぇよ。この痣みたいなの取れないんだけど⁉︎」
俺は、服の上から自分のあの痣の場所を指し示す。
ルイは、少しぽけんとした顔して、小首を傾げる。
「だって、契約印だもん。それ、消えたら隼人が、俺のものだって分からなくなっちゃうじゃん。」
当たり前でしょとでも言いたいような口調。
「んなっ!ルイのものとかでいちいち印なんていらないだろ⁉︎」
「規則なんだよ。それないと、俺ら一般の吸血鬼は、昨日の先輩みたいな狩人さんに殺されちゃうから。」
「狩人ってなんだよ⁉︎昨日から、意味わかんないこと多過ぎだし、ちゃんと俺の分かるように説明しろ!」
あぁ…とルイは、話しにくそうに空を見つめ、頬をかく。
俺が袖を引っ張り、ジロリと睨むと苦笑いした。
「なんかさ、隼人が睨んでも、可愛い。」
茶化すように言う。
「茶化すな!早く教えろ!」
俺が急き立てると、ルイは、一息吐き話し始めた。
「吸血鬼が、沢山の人の血を吸って、混乱が起きないように血の花嫁を決めさせて、人間側と吸血鬼側で二重に管理してるの。その人間側が太陽神をなぞってる『アポロン』っていう教会で、吸血鬼側がその対の月の女神をなぞった『アルテミス』っていう組織。」
ここまで大丈夫?というとルイが間を置く。
大丈夫も何も、話が現実味なさ過ぎてついていけないというのが正直なところだが…
「とりあえず、監視の目が厳しいから印を刻んで違反してないって、知らせないとダメってこと?」
「ご名答。つまりはそういうことだね。だから、契約破棄しないと消せない。それに俺も消したくないし。」
上機嫌でいうルイ。
俺の心臓が高鳴る。
このヤロ…
本当、最近はルイにペースを持っていかれ過ぎてるな…
俺は、盛大に溜息をついた。
たぶん、首のあいたシャツでもあまり見えないとは思うけど…
毎日に意識しそうで、嫌なんだが、
でも、たぶん契約破棄は出来ないわけで。
どうしよう。
うーんと唸っている俺を横目にルイは続けて話し続ける。
「ちなみにアポロンのシンボルマークは、太陽と金の弓矢でアルテミスは月と銀の弓矢だから、覚えといて損はないよ?」
「てか、二つも管理するのいらなくないか?人間側だけで…」
俺は、ふと浮かんだ疑問をぶつける。
吸血鬼を管理するだけだったら、一つで十分だろ。
人間のほうが弱いわけだし…
「アポロンは基本的に吸血鬼を否定してるから違反が少しでもあれば殺すし、ハーフの存在は許してない。だから、アルテミスが反対側にいることで力の均衡を保ってる。」
ようは、 吸血鬼が無駄に殺されないようにってことか?
「ふーん、人間の政治なんかよりよっぽど大変そうだな。」
「そうだね。種族が違えば、主張とか変わってくるのは当たり前だから。それに、種族が違わなくても、分かれるくらいだし。」
ルイは含みのある言葉を漏らす。
まるでそれを嘆いてるような、そんな気がする。
「革命派とか言う奴か?」
「そう、最近アルテミス内の革命派が急激な吸血鬼至上主義を唱えだしたらしくて、穏健派の親父も大変らしい。」
あぁ、だから先輩にあの条件を出したのか。
妙に納得がいった。
そして、先輩という単語で一つの疑問が湧く。
「なぁ、ルイ。先輩がハーフってどういうことなんだ?」
「ハーフっていうのは、吸血鬼と人間の間の子で、吸血鬼程の力を持たないのに吸血衝動が若干あるものだから、よく出来損ないとか忌子と呼ばれてる。」
「それって、理不尽だろ。だって、本人が、望んで生まれたわけでないのに…」
「そうだな。確かにな…でも、それが現実なんだよな。」
俺らは、押し黙った。
これから、どうやって先輩と関わればいいのか分からなくなる。
同情なわけではない。
むしろ、そんな体験なんてない俺が同情なんて出来るわけがない。
そんな資格すらない。
ルイは、自分の事を責めてるようにも見える。
沈んでいる俺らに突然、声がかかった。
「おい、お前ら。」
2人揃って、ビクリとして立ち止まる。
この声は……………
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