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夜鳥の現在
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「う…………頭、いた……」
どうやら、体育祭から戻ってそのまま寝てしまったようだ。
慣れないことをさせられて疲れたというのもあるが、もう外は暗くなり月が真上にのぼっている。
そういえば、久しぶりに昔の夢を見ていた気がする。
辛く、暗いあの時を。
まあ、今も明るくなったのかと言われてもそうではないが……
まだ、マシだろう。
あいつらのおかげで、この教会に縛られる時間も減った。
そのおかげで、罵られて焦ることも減っている。
俺は、大きく伸びをして、ベッドから起き上がり、キャンバスに向かう。
油彩の匂いのこびりついた狭い部屋は、俺がどれだけここで描いてきたのかを物語る。
かなりの時間を絵に費やしてきた。
部屋が狭いから、あまり足を伸ばすことが出来ない。
そのせいで、右足を抱えて描くという癖がついてしまったが……
広い美術部でも結局その格好で描いてしまっている。
別に気にしてもいないが………
久々にその絵に、筆を走らせる。
思いのままに。
自由に。
何にも縛られず…………
少し経ってから、ドアをノックする音がするとあの白衣のあいつが顔を出した。
「お〜い、郁也ぁ〜、今日はメディカルチェックに来たんだろ?僕が、やってあげるから、早くおいでよ。」
相変わらずのお人好し。
だけど、こいつだけは嫌だと思わなかった。
そんなお人好しのところを陽に被せているのだろうか?
わからない。
俺は、筆を置いて、無言で部屋を後にした…………
ーーー陽ーーーーーーーー。
俺は、どうにかなってるよ…
だから…………
どうか…………
どうか、安らかに。
天国という場所から見ていてくれよ。
そう心の中で呟き、窓の外の満月を見つめた……………
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