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2.見えない終わり
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それから数日後、僕は最悪の場所で荒川さんを見かけた。
授業の合間に用を足そうとやってきた男子トイレに、荒川さんがいた。ここはほとんど低学年しか使っていないはずなのに、どうして。
鼓動が早くなる。
あの日から、僕の中で荒川さんという存在は変わった。性的ないたずらをしてくる気色悪い先輩から、恐怖の対象へと変化したのだ。手紙は返してもらったとはいえ、あの人を見かけるたびに、襲われたときのことが蘇ってくるのだ。
幸い、荒川さんはまだ僕に気づいていない。足音を立てないように、僕はそっと踵を返した。
「中森」
「は、はい」
ところが、すぐに気づかれてしまう。
いや、荒川さんは初めから僕に気づいていたのだろう。
「どうして逃げようとしたんだ?」
「…………」
荒川さんの質問にも答えず、僕は荒川さんにまた背中を向けた。
「あのこと、バラされてもいいのか?」
荒川さんはまた、僕の恋心を利用しようとしているようだ。そうなんだとしたら、どうして僕に手紙を返したのだろうか。僕からすれば嬉しいけど、あまりにも迂闊過ぎる。
「お好きにどうぞ」
要するに、今の荒川さんには僕が栗原を好きだと証拠づけるものがない。荒川さんが僕以上の信頼を栗原から勝ち取らない限りは、僕を脅すなんてできないはずだ。
それなのにこの人は、よっぽどの馬鹿なのか。いや、それともーー
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