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2.見えない終わり3
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僕は荒川さんに続いて、洋式便器のある個室に入った。
荒川さんがしっかりと鍵を閉める。かちゃり、という音が僕を地獄へ閉じ込めた。
6講時目の授業開始を告げるチャイムが鳴り響くけど、気にしている余裕はない。栗原に嫌われるより授業を欠席するほうがずっといいに決まっている。それに僕の場合、出席日数には余裕がある。……その余裕を、精神的な余裕に変換したいくらいだ。
「そういやお前、トイレに何しに来たんだ? ションベンか?」
「ええ……まあ……」
面と向かって小便なんて下品な言葉をぶつけられるなんて不快だ。僕は顔を顰めないようにするだけで精一杯だった。
声に滲んだ不快感までは誤魔化せていなかったのか、荒川さんが煽るように口調を強める。
「そうか。悪かったな、我慢させて。今ここでしていいぞ」
耳を疑うしかなかった。
「何、を……」
「ションベンだよ。それ以外に何がある」
この人は、僕に目の前で放尿しろと言っている。どこまでも僕を侮辱している。
だけど、拒否したところでどうせ脅されることは分かっていた。
「俺がションベンしてもいいって言ってんだ、さっさと出しとけよ。後でしたくなってもさせねえぞ。……まあ、栗原に嫌われてもいいんなら構わねえけどよ」
ほら、やっぱりそうだ。
栗原のことでなければ、僕は脅されても逃げ出して、助けを求めていただろう。あと少しだけ栗原への気持ちが本気でなければ、嫌われても仕方ないと諦めていただろう。
けれども残念なことに、僕は栗原が本当に好きなのだ。
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