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3.言えない気持ち2
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こういうとき、雰囲気を和らげるのはいつも僕の役割だった。
「俺にできることがあればいつでも言ってくれ」
なのに栗原は珍しく自分から沈黙を破った。それも、いつもの栗原より少し長い台詞で。
あまりにも心強い言葉に、甘えたくなる。何もかも打ち明けてしまえば、きっと栗原は僕のことを放っておけなくなるだろう。荒川さんの手から、僕を助けてくれるだろう。
だけど、友情や優しさと恋愛は別問題だ。栗原が僕の気持ちに応えなくても、今みたいな関係が続くのならまだ良い。けれども、もしこの関係が壊れてしまったら、きっと僕は後悔する。
「……ありがとう」
結局、礼しか言えなかった。
栗原を信用していないわけではない。そのことも、ちゃんと伝わっただろうか。
「友達だから」
だけど、少なくとも栗原は僕を信用しているらしかった。僕は栗原の信用に値するような人間ではないのに。
友達と言われて、少し傷ついてしまうような人間なのに。
「うん」
自分に言い聞かせるように頷く。栗原は僕の友達。友達に下心なんて持っちゃいけない。
それっきり、僕と栗原の会話は途絶えた。
僕は予定通り、10時5分前に部屋を出た。
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