アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
5.裁かれる想い17
-
「は……? どうして、そんなところから栗原が……」
あまりにも予想外な来襲に、荒川さんも動きを止めた。驚きのあまり、栗原に対する憎しみを露わにする余裕もないようだ。
僕も、自分が涙と涎と嘔吐物だらけのひどい有様であることも忘れて、縋るように栗原を見た。こんな姿見られたくないという羞恥心も、栗原が助けに来てくれたという安心感には勝てない。
少しだけ視線を下ろして、僕は思わず声を上げた。
「栗原、手が……!」
窓ガラスを素手で割ったのだろう。栗原の右手には光る破片が刺さり、そこから血が出ていた。それも、1箇所だけじゃない。
割れた窓をくぐったからなのか、服にも破片がまとわりついていた。
栗原は僕の声に応えることもなく、こちらに向かってくる。その足取りは重く、堪えきれない感情が滲み出ているようだった。
僕たちの目の前まで来ると、栗原は足を止めた。
「なんだよ、悠生なら渡さな……」
荒川さんの言葉は、最後まで紡がれることはなかった。栗原の右の拳が、荒川さんをベッドから殴り落としたのだ。荒川さんがベッドから落ちる音が鈍く響いた。僕の中からも、内壁を押し広げるような異物感が消えた。
「くそ……っ、お前が俺の悠生を……!」
それからすぐに、荒川さんが短く呻いた。また、栗原が荒川さんを殴ったのだ。
「中森はお前のものじゃない!」
あまりにも大きな声に、思わず身体が竦む。感情的と言えるほどに怒鳴りつけるその声は、栗原のものだった。僕が怒鳴られているわけではないのに、ただ圧倒されるしかない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
71 / 87