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6.今度こそ、秘密の手紙
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それから僕は、「僕たち」のものだった部屋に、1人で生活している。
あの日、当日のうちに、荒川さんの退寮が決定した。寮生会の規則として、暴力を振るったら退寮、と決まっているからだ。だから本当は栗原も退寮になるところだったけど、僕が事情を説明して、先生方の理解を得ることができた。とは言っても、栗原に宛てた手紙を見られて脅されたとか、その辺の話は端折った。本当は、一連の出来事については一言も話したくなかったけど、栗原が退寮になったら僕が寮にいる意味もなくなる。だから仕方なかったのだ。
僕を助けるためと言えども、寮の窓を壊したり、行き過ぎた面は否めないとのことから、最終的に栗原は2ヶ月の停寮になった。
今まであったことの全てを僕がきちんと話していれば、もしかしたら栗原は無罪放免になったかもしれない。後悔する気持ちはあるけれど、真実を包み隠さず先生方に話せるほど、僕は立ち直ってはいなかった。
学校に行くときも、帰ってきてからも、食事のときも、入浴のときも、栗原はいない。
クラスも違うし、一緒に行動するような用事もないから、栗原とはもうずっと話していない。
僕は基本的には1人が好きだし、1人でいるほうが気楽だ。1人で過ごすことくらい、なんともないどころか、むしろ喜ばしいはずだった。ーー栗原と相部屋になるまでは。
何も得ないまま過ごすことと、得た上で奪われることは違う。荒川さんはもういないというのに、毎晩得体の知れない不安に襲われて、夜が来るのが怖かった。
だけどそれも今日が最後だ。今晩、栗原が寮に戻ってくる。
栗原が帰ってきたらなんて言おう。そもそも、僕から話しかけても良いのだろうか。
ーー僕たちはまだ、恋人同士でいられるのだろうか。
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