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6.今度こそ、秘密の手紙3
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「栗原」
栗原が椅子に腰を下ろしたので、僕はすかさず声をかけた。荷物整理は終わったようだ。栗原は椅子ごと回転してこっちに振り向いた。
だけど、続きの言葉がなかなか出てこない。話したいことは山ほどあったはずなのに、優先順位がつけられない。
数秒の沈黙が僕たちの間に流れた。
「……ここに帰ってきてくれてありがとう」
結局僕は、こんな遠回しな言葉しか言えなかった。会いたかったとか、好きだとか、そういう言葉は今は口に出せそうもない。
これじゃ、僕も栗原みたいだ。……会話、成り立つのかな。
「帰ってきてよかったのか?」
珍しく自信なさげな栗原が僕から視線を外す。
「帰ってこなかったらどうしようかと思ったよ」
戸惑いを隠そうとして、つい呆れたような口調になってしまう。
僕には分からない。どうして栗原がそんな顔をするのかが。
いろいろな状況や事情が変わったけど、僕はただ、栗原のことを好きでいただけだ。それは今も変わらない。
それなら、どうして。
「こっちに来てよ、栗原」
渋々前を向いた顔には、まだ不安が滲んでいる。それでも栗原は僕のすぐそばまで来てくれた。
同時に僕も立ち上がり、背伸びをしてーー
そのまま、栗原の頬に唇を触れさせた。
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