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①
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物心ついた時から、家庭とは崩壊しているものだった。
仕事が一番の父親と見た目が命の母親の間に生まれたオレは、生まれてすぐに使用人の手に委ねられた。オレが生まれる前からお互いに別の相手がいる二人には、オレの世話はどうでもよいものだったんだろう。
離婚はしない約束だったようで、二人とも表向きはイイ夫婦を演じていた。
裕福な環境だったことは、ありがたかった。二人が顔を合わせケンカが始まると、耳障りな罵声の聴こえない場所まで逃れることができたから。
愛情は注がれなかったが、邪険に扱われることもなく、時々入れ替わる使用人がオレの世話をしてくれて、それで特に困ったこともなかった。
そんな風に育てば、歪むのが当然なのだろう。
気付けば、オレは腐るほどの金を与えられ、金があればなんだってできる、そう思って生きていた。
小学生の頃には、顔がいいだけの変な奴扱いされていたオレも、中学に入ると急に身長も伸びて、女子からモテるようになって、金回りのいいオレの回りには常に誰かが群がっていた。
童貞も、その頃棄てた。相手はもう顔も思い出せない歳上の女だったが、それほど感動もなく、一人で処理するよりは楽か、なんて考えていた。
高校は面倒で受験もしなかったのに、一人息子が中卒なのは、世間体が悪いとかで、勝手に金の力で私立の付属高校に放り込まれた。
もちろん、生活態度は改めるつもりもなく、遊び歩いて過ごしていた。
そして、高一の終わり、事件は起きる。
いつものように、学校をサボり適当に街をぶらついていると、携帯でセフレの一人の美羽から呼び出された。
『ちょっと二人で会いたいんだけど』
いつも能天気な美羽らしくなく、固い声。すぐに待ち合わせ、人の少ない場所に行きたいという美羽の要望に応え、よく使うラブホに行く。
お馴染みの広いベッドに腰かけ、沈んだ様子の美羽がようやく重い口を開いた。
「デキちゃったみたい・・・」
ナニが、とは尋ねなかった。
いつかこんな日が来るかもしれないと思ったことはあったが、まさか。
「オレら、避妊してたはずだけど・・・」
「アキラ、覚えてない?10月にみんなで集まった後、ベロベロに酔っぱらってしちゃったじゃん。多分、あんトキだと思う」
確かに二ヶ月半前、仲間内で集まって散々呑んで、気がついたら裸で美羽と寝てた。使用済みのゴムは落ちてなくて、飲みすぎたら起たなくなるって聞くしなぁ、とそれきり気にもしていなかった。
「・・・アキラ・・・」
美羽の震える声を聞いたら、自然に体が動いていた。
体に負担をかけないよう、柔らかく細い体を抱きしめる。
「オレがなんとかすっから、美羽は心配すんな」
普段、女はポイ捨て、のオレがセフレにするくらいだから、美羽のことが嫌いな訳ではなく、どちらかといえばお気に入りの部類だ。
ましてや、オレの子どもを授かっている美羽を大事に思うのは当然だった。
正直、こんな日が来た時には、オレは絶対に中絶をさせるだろうと自分自身思っていた。
子どもが出来た驚きよりも、そのことを全く嫌がっていない、むしろ歓迎している自分に驚く。
家族ができるのだ。あんなイビツな家族ではなく、オレだけのオレの家族が。
そう、思うと体が浮き上がる気分だった。
美羽の前に跪いて、言った。
「オレと結婚しよう」
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