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会長の進路
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「兄さんから電話...ってまた帰省の話だろう?」
会長は苦笑している。
やはり会長もわかっていたようだった。
「でも、何か話があるみたいだぞ?」
「へぇ。何だろうね。」
あまり興味が無い、といった風に答えた会長は、また寝転がって俺の膝に頭をのせた。
硬いとか文句を言ってたクセに、随分気に入っているようだった。
「宗吉」
名前を呼ばれて見下ろすと、仰向けになっている会長と視線がぶつかる。
会長は手を伸ばすと、俺の眼鏡に触れた。
突然のことで、思わず肩を揺らす。
眼鏡を外されると、視界が少しだけぼやけた。
「よし。」
会長はそう言うと、眼鏡をベッドの横のテーブルに置いた。
「宗吉、眼鏡を掛けたまま寝てしまうからね。こうして取っておけば大丈夫。」
そうして微笑んだ。
いつも取って寝てる気がするのだが...
俺がぼんやりと会長を見つめていると、会長もじっと見てくる。
「眼鏡、いつもしてなくてもいいんじゃないかい?」
「ないと文字見るの大変だからな。」
俺は眼鏡を外すと全然見えなくなる訳ではない。
普通に生活は送れるレベルだ。
しかし文字を書いたり読んだりするときは必要だ。
その都度掛けるのも面倒なので、ずっと掛けている。
会長は、「コンタクトにはしないのかい?」と訊ねてくる。
「大学行ったら、考えるかもな。」
そう告げると、会長は不思議そうに「大...学......」と呟いた。
「宗吉、もう大学のことを考えているのかい?」
「まあな。行きたい大学も決めてある。」
「そう...なんだ。」
会長はよく分かっていない様な顔をすると、目を閉じた。
「このまま、大好きな学園で大好きな生徒たちと過ごせれば、僕は満足なんだけれどな。」
要するに、進路が決まっていないようだ。
会長は目を閉じたまま、口元に笑みを浮かべている。
そうして、
「こうして、宗吉の膝の上でずっと眠っていたいな。」
と呟いた。
ダメだこりゃ。
「冗談よせよ。そんなの俺が疲れるだろ。」
「はは...っ冗談じゃないさ。本当に。」
会長は笑いながら目を開けると、俺の顔に手を伸ばして、頬を撫でた。
「宗吉をお嫁さんに貰ったら、毎日こうして寝られるだろう?」
そう言われると、肌がざわざわと粟立った。
よくわからない感情が心の中に拡がっていく。
また...変な気分だ。
俺は息苦しい中で、言葉を絞り出した。
「...なんで...俺が嫁なんだよ......っ」
「ああ、そこなんだ。」
会長は苦笑した。
いや、だって嫁とか言われても嫌だろ普通。
「それに、薫はまず自分の進路ちゃんと考えろよ。」
「ちゃんとって...
宗吉をお嫁さんに貰うってところまで考えてあるんだけどな。」
「...ったく」
会長はもっとしっかりしていると思っていたのに。
俺は溜め息をつくと、ポンポンと会長の頭を撫でた。
「ほら、もう退いて。シャワー浴びてくる。」
会長は「えー」と言いながらも体を起こすと、伸びをしてベッドに座り直した。
俺は立ち上がって風呂場に行く。
既に時計は夜中の1時を回っていた。
また会長が睡眠不足になってしまうな...と少し心配になったが、先程ぐっすり寝ていたから、平気だと思った。
とりあえず、無理だけはしないでほしい。
そして、ちゃんとした進路を見つけてほしい。
でないと俺が菅谷と同棲できないだろ!!
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