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はやくこの部屋から出たくて急いで朝食をかきこむ。
と、その時だった。
「そういえば父様、今夜のお食事会のことなのですが。」
今夜の食事会?私はそのようなこと、一度も聞いたことはない。
父様に視線を向けると私のほうには一切向かずに幸樹の質問に答えた。
「ああ、そのことかい?どうした、なにか都合が悪くなったのかい?」
「いいえ、違うんです。ただ、嬉しくって。」
「どうして?」
「だって、久し振りのお泊りですよ。僕が覚えている限り、最後に行ったのは
僕が幼稚舎にいた頃ですもの。嬉しくって・・・。」
そういってにっこりと笑う幸樹とは反対に僕の顔は青褪めていく。
食事会、お泊り、幼稚舎・・・
私の中の記憶には家族でお泊りどころか出掛けた記憶すらない。
幸樹が幼稚舎ということは僕とは3つ離れているので僕は初等部に所属してい
た頃ということになる。
頭をフル回転させてもそんな思い出はどこにもない。ただあるのは今と変わらない無視される生活の思い出のみ。
そんな僕に気付いたのか晴樹兄さんが口を開いた。
「父様、聖は今回家にいるということでしたよね?」
「ああ、外せない用事があると言っていてね。ねえ、聖?」
いいえ、と首を横に振りたかった。そんな話一度も聞いたことがない、と。
否定したかった。
参加したい、と一言口に出したい。
しかし、自分の立場を考えればすぐに自分がするべきことを嫌でも知らされる。
僕は、僕の、意見を。
「・・・はい、残念ながらクラスの仕事が終わっていなくて。」
もう、いやだ。
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