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不測の事態
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***
翌日。
「おっは…よう?」
「…はよ」
げんなりした表情を作って(自覚がある、俺今すごい目つき悪い)顔を上げると、
桐島はやっぱりぎょっとした。
「何景気悪い顔してんの」
うるさい余計なお世話だ。
返事をする元気も無くて机にまた突っ伏すと、桐島も俺に構うのを諦めたようで、大人しく自分の席に着いた。
昨日の夜、いや正確にはあの後、一体全体どうやって篠を自分の家に追い返したのか全く記憶が無い。
覚えてるけど思い出したくない。なんかもう、黒歴史だ。
なんだってとち狂ってキス……なんか、したんだろ、俺。
なんで言われるまま?
断ろうと思えば断れたのに。
でもあの時の篠にはそういう気持ちが持てなくて、必死に縋る様なあいつに気圧されちゃったというか、ってだから誰になんの言い訳してんだ。
なんか…自分が自分でわかんねー。
わかんないことなんか、篠だけで手一杯だ。
バカ。
って、頭で考えたって言わなきゃ相手には伝わんないけど。
気を紛らわす為に手元の携帯を触ると、何件かの着信とラインが目に入った。
全部もちろん美香からだ。篠には俺の連絡先教えてないし。
こんなことでも一瞬ときめいちゃうんだから、俺も本当にどうしようもないよな…なんて再認識しつつアプリを開くと、
案の定、一緒に登校しなかったことについてなんでもいいから返事しろとの内容だった。
いや、もっとかわいいけどね、文章は。
『大丈夫?』
『どうしたの?』
『学校には来てるんでしょ?』
『電話してね』
…ただの天使か。
心配させっぱなしなのは不本意なので、すぐに本文を打ち込む。
そもそも美香のせいじゃないし。
つか篠も篠で詫びの一本くらい入れろっての、あいつ。いや連絡先知らねーけど。
えーと、
『ごめん、課題提出しなきゃいけなくて先に出た』
っと。これでいいな。
まあ俺は課題とか予習復習とかはちゃんと忘れずに家でやって来る方だから、こんなことはまず無いけど。
返事は思ったより早かった。
『そんなことじゃないかと思ったー』
『千明にもそう言ったんだけど、
絶対先輩は忘れたりしないからって聞かなくて』
『夏目にも忘れちゃったりする時はあるのにね』
全くだ、とは、素直に思えなかった。
むしろ美香より俺のことを理解してる篠に戸惑う。
あと、そういえば今日はふたりっきりで登校したんだな、とか。
ていうかよく朝一緒に行こうなんか考えるよなあ、あいつ。
俺なんて夜ろくに寝れなくて、ギリギリまでどんな顔して会えばいいのか考えたくらいなのに。
やっぱ…からかわれてんだろーな…。
アホらし。
もー篠なんか知るかっ。
携帯をブレザーのポケットに戻そうと取り上げると、バイブが鳴った。
なんだまたか、とちょっと乱暴にロックを解除すると、
『言い忘れたけど、千明があんまり心配するから夏目の番号とアドレス教えちゃった』
…え、
そして間を開けずに着信。
知らない番号。
勢いで着信を受けると、『あっ先輩?』なんて声が聞こえてきて???
切った。
ど、動揺し過ぎ、俺。
落ち着かなくて画面を食い入るように見つめてるとまた着信になって、急いで拒否拒否。
何も考えずに電源を切って、鞄に放った。
なんだよこれ、なんであいつ電話なんかして来るんだよ!?
ついこの前だって俺に連絡先は教えないとか言ってたじゃんか。
言動と行動くらい一致させろよ、お願いだから…!
やっぱ篠なんか嫌いだ。
大っ嫌いだ!
何度目かの結論に至って、俺は今度こそ机に突っ伏した。
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