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紙一重の閃き
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嫌な気分で午前中の授業をやり過ごしてる間、俺は『どうやったら篠と顔を合わさずに適度な距離を保ちつつフェードアウトできるか案』を検討することに没頭した。
あからさまには避けられないんだよな…あいつ、意外と聡いし…その辺は。
朝も一緒に行かなかったら絶対勘ぐる。
今日然り。
勘ぐられると面倒だ。
傷つけたいわけじゃ、ないし。
あ、そだ。
部活とか…委員会!
気はあんまり乗らないけど、入れば何かと理由を付けて時間をズラすことができるから登下校の問題は解消だ。
わざとらしいかな…いやーでも、追い詰められた感があればそんな気にならないかも。
こう、「俺は嫌だったんだけどぉ、みんなが是非にってしつこく推薦するもんだからさー参っちゃうぜHAHAHA★」みたいな!
ナイスかも!(←バカ)
キンコンカンコン、とお馴染みのチャイムが鳴って昼休みになると、まさに絶妙のタイミングで案件の方から俺の元にやって来た。
クラスメイトが散る前に委員長がよいしょと席を立ち、
「5限が始まる前に、来月ある球技大会と再来月にある体育大会の委員決めと、修旅の委員を決「はいはいはいはいはい!」
ガッターンと椅子をけたたましく倒し勢い良く手を挙げた。
クラス中の視線が一気に集まって、しんとなった後『アイツ大丈夫か脳でも沸いたか』みたいな悲しげなものに変わったけど、
無視して耐える。
行事にはあまり積極的じゃない俺が気でも触れたみたいな行動を取ったのが珍しかったのか驚いたのか(というかその両方で)、
「ゆ、柚木がやるの?」と委員ちょの乾いた声は教室にポツンと響いた。
「やる。全部」
「ぜっ全部って、掛け持ちすんの?
今からの時期結構呼び出しあるよ?
修旅の委員に関しては夏休み潰れそうな勢いだし、」
「やらせてください!」
「っておいおいおい!」
焦った様子でぎゅるっと回転してこっちを向いた桐島が、息巻く俺の袖をちょんと引っ張った。
「何」
「クラスの中から三人出す予定の委員を、なんでお前が全部引き受けんの?
しかも夏休み潰れるってわかってるのに…バカなの?」
「うるっさい!」
立ち上がりかけた桐島の肩をむんずと掴んで席に無理矢理縫い付けると、反動で桐島はちょっとよろめいた。
「柚木!」
って、こいつも懲りずにまた立ち上がろうとするもんだから、今度はその肩に俺の全体重をかけて席に押し付ける。
「ちょっと…柚木と桐島はコントでも始めたの?」
「「委員ちょは黙ってて!!」」
「えええ!?」
「柚木わかってんの? キャラ崩れまくってやばいよ?」
「俺も俺で切羽詰まってんの! 察して!?」
「察っ…じゃあもし委員会が全部同じ時間に重なったらどうすんだよ!」
「み っ つ に 分 裂 す る」
「バカだ! やっぱバカだ!」
「ということで委員ちょ、俺が全部やるから!」
「ええ!? 話終わったの!? なんかよくわかんないけど…わ、わかったぁ」
騒然となったクラスをスルーでしばらく俺と桐島はやんやん言い合ったけど、
徹底的に唯我独尊を貫く俺に何を言っても無駄だと悟ったらしく、結局最後は桐島が折れた。
適当にはぐらかして(何回かチョップされたけど)その場を切り抜けて、
「あ、早速だけど球技大会の集まり、今日の放課後もうあるって!」
って言う委員ちょの声に相槌を打ち、
昼休みが終わって午後の授業もさくさく進んで???
「夏目先輩も球技大会の委員なんだ」
にっこり、まさに擬音が付きそうなくらいの満面の笑みで……なぜだか篠が居るわけで。
委員会の会場である会議室のドアの前でパクパクと口を開けたり閉めたりしてると、「金魚っぽいっすね」なんてからかわれた。
いや、今は魚類の話をしてる場合じゃねーよ!
「おまっ…なん、何して」
「やだな、委員ですよ。先輩」
「委員…」
「球技大会の」
「ジーザス…」
「なんか俺の知らないところで知らない間に体育大会の委員もさせられることになってて、ほんと…ダブルでツイてないってこの事ですよねー」
参っちゃいました、なんて篠は朗らかに言った。
「ぅわ、マジで神なんていねえ…」
「とりあえず、よろしくお願いします。先輩」
「(帰りたい)」
「先輩?」
帰りたい!!!!
「おーい。先輩? え、無視?」
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