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※理想とは逆の形だけど
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□兄(オネェさん)×弟(高校生)
あと数十分で日付が変わる深夜。
ギシリとスプリングが軋むのと同時に、ベットの中心が数センチ下に沈んだ。
閉じていた瞼を持ち上げ何回か瞬きをするとクリアになる視界。
目の前には綺麗な薄茶色の瞳を涙で潤ませ半泣き状態になっている少しばかりゴツい美人が、仰向けに寝ている俺の腹の上に跨っていた。
「せーちゃあああん」
うわぁああん。と無理やり出している高い声のまま泣き出したその人は履いているスカートが捲れ下着が見えている事もお構いなしに全力で俺に抱き付いてくる。
「美月(みつき)さん、またフられたの?」
「うぅ…ま、またとか言わないでよぉー! せーちゃんのバカァ!」
回された腕により軽く首が締まって苦しいとか、夜中にそんな大声で叫んだら近所迷惑になるだろ? とか。色々言いたい事はあるけど、そんな言葉を言えばこの人は俺の事を冷酷人間だの何だのと罵り更に泣き喚くので黙っておく。
俺は心の中で小さくため息を吐きながら腹に力を入れ上半身を起こし、両手を美月さんの後ろへ回すと自分よりもほんの少しだけ広いその背中をゆっくりと撫でた。
「美月さん、泣かないで。きっともっと素敵な人が美月さんの前に現れるよ。だから、ね?」
この人は知らない。顔に嘘の笑顔を貼り付けている俺が、今すぐにでもその形の良い唇にキスを落としたいだとか、目の前にある綺麗な顔を快楽でグチャグチャに歪ませ縋り泣かせたいと、なんとも邪な考えをしている事に。
そんなどこの馬の骨とも知らない奴なんかより、俺にしとけばいいのに。
その言葉を口に出来ないのは、自分がまだ高校生のガキで、大人な美月さんを支えるには精神的にも経済的にも力が足りないと自覚しているから。
早く大人になりたい。
でもきっと、俺が大人になる頃には素敵な相手が見つかって幸せになっているんだろう。
そんな事を考える度不意に泣きそうになるが、顔には出さないよう我慢する。
「……お兄ちゃん」
「は?」
「大丈夫だよお兄ちゃん、って言って。美月さんなんて他人行儀な呼び方しないでよ。せーちゃん」
グリグリと俺の肩に顔を押し付けてくるその行動は子供みたいで可愛いけれど、おい。ちょっと待てコラ。
鼻水が服に付いている気がするのは、俺の見間違いだろうか?
「この前兄さんが自分のことは美月って呼んでって言ったから、俺は兄さんのこと美月さんって呼んだんだけど?」
「うー……。それは外にいる時限定の話ですー。今は家の中だからお兄ちゃんって呼ばなきゃダメなの!」
俺より五つも年上のくせにその態度はどうなんだと思わなくもないが、この人はこういう人だと知っているのであえてツッコミはしない。
てか今俺の肩見てヤベッて顔したな。
真顔な俺にテヘペロした後ごめんね、って可愛く謝ってくる兄さんマジで犯したーーげふん。
自分の心を落ち着ける為にも俺は一度大きく深呼吸をして、ベットサイドに置いてあるテッシュを数枚掴み服についた鼻水を拭いていく。
ある程度取れた所で自分の肩から目の前に視線を戻すと、なぜだか突然兄さんに両手首を掴まれベットの上に押し倒され、俺は硬直する羽目になった。
「……兄さん?」
さっきまで大人気なく泣いていた人は、一体どこへ行ってしまったのだろう。
もしかすると、始めから全部演技だったのかもしれない。
そう思える程に、今俺に覆いかぶさっている兄さんの顔は見た事もない男の表情をしていた。
「本当はね、我慢するつもりだったの」
「……なにを?」
「せーちゃんが十八歳になるまでは、普通の兄弟でいようって。我慢、するつもりだったの。でもね、さっきのせーちゃんの表情見た瞬間、もう我慢出来なくなっちゃった」
「さっきの、俺?」
「そ。アタシの鼻水を拭いてた時」
「はぁ!?」
服についた兄さんの鼻水拭いてる俺見て今の状況って、何だよ、それ。
「せーちゃんは無意識だったんだろうけど、凄くね、優しい顔してたの。アタシ今まで我慢して我慢して我慢して我慢して、他の男で気を紛らわせたりしてたけど、もう無理みたい。あと一年……ううん、もう一秒だって我慢出来なくなっちゃった」
「兄さん? 何を言っーーんんっ!?」
好きよ。そう蠱惑的な囁きと共に俺は唇を塞がれ、隙間からスルリと侵入してきた兄さんの舌に翻弄されるがまま、言葉を奪われる。
「ふ、ぁっ……。にぃさ、まっ、やめ、んぅっ」
「だーめ」
ずっとキスしたいと思っていた兄さんの唇は柔らかくて、凄く気持ちがいい。
器用に動く舌は的確に俺の弱い所を攻めてきて、キスだけで頭がとろとろに溶けそうだ。
でもこれは、このまま事が進めば状況的に俺が受け入れる側じゃないのか?
俺は兄さんに、自分の物を入れたいのにっ。
「っは、ぁ……これ、違っ」
「んー? 何が違うの?」
「お……れはっ、に、さんにっ……ぅ、あぁっ!」
ズボンの中に侵入してきた兄さんの左手が俺の物に直接触れ、ゆっくりと上下に動いていく。
着ていたシャツはいつの間にかたくし上げられていて、露になっている胸の飾りに軽く歯をたてられ俺は背を仰け反らせた。
「ひぁ、やっ、そこ、ダメっ。ん、んんっ」
自分でも信じられないくらい甘い声が次々と口からこぼれていき、生理的な涙が目尻からこめかみへ伝っていく。
いつも通りのやり取りをしていたと思えば、この急展開。
混乱しているはずの頭の中は兄さんから与えられる快楽で次第にぼんやりと白く染まっていく。
自分の声が恥ずかしくて右手の甲を噛んで抑えていると、兄さんは「いけない子」と少し掠れた声で呟き、俺の右手ばかりかベットのシーツを握り締めていた左手までも、なんともあっさり片手で押え付けてしまう。
「一度イっちゃいなさい」
「……あっ、ダメ、兄さっ……。そっな手、激しく、しなぃ、でっ。あ、あ、ゃっ、も、イっく……ぅぁ、あああっ!!」
溜まっていた快感が一気に爆発して、足でシーツを蹴りながら俺は腰を浮かせ数回体を痙攣させる。
全力疾走をした後に似た倦怠感を感じながら荒い呼吸を繰り返し、俺は涙で滲みぼやける視界に兄さんを捉えた。
「ふふっ、いっぱい出たわね。可愛い」
「にぃ、さんっ……。キス、して」
「っ。あらあら、せーちゃんたらどこでそんな誘い方習ってきたの? もしかして実は経験済みとか?」
「んなわけな、ぃっん……はっ、ぁ」
俺の精液が付いた手を舐める兄さんの姿が扇情的で、気付けばキスを強請っていた。
長い髪を邪魔だと言わんばかりに掻き上げ、余裕そうな笑みを浮かべているくせに与えてくれるキスは荒々しく、まさに噛み付かれているみたいだと俺は心の中でこっそりと笑みを浮かべる。
理想の形とは逆になってしまっているが、俺が兄さんを好きな気持ちに変わりはないわけで。
こうして俺を求めてくれる兄さんの姿はカッコイイし可愛いし、受け入れる側も悪くないかもしれない。
「んっ、ふぁ。……なぁ、もっと。もっと俺に、兄さんをくれよ」
「ほんっと、どこでそんな誘い方を学んだのかしら。あんまり煽ると手加減してあげられないわよ?」
「しなくていい。だから、思いっ切り俺を気持ち良くして、兄さんも気持ち良くなって」
「……せーちゃんて恐ろしい子ね」
「今更だろ?」
「ふふっ、そうね。ーー好きよ、青磨(せいま)」
「俺も好き。美月兄さん」
綺麗な曲線を描きながら蠱惑的に微笑む真っ赤な唇へ、今度は俺からキスを仕掛ける。
自分の気持ちに気付いてから背徳感が無かったわけではない。
しかしそんな背徳感すら、今の俺にとっては気持ちを高ぶらせるスパイスの一つにしかならないのだ。
-end-
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