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企画短編【夏のワンシーン】
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ドーンという音が響いてベランダの方へ顔を向ける。そうして見えたのは夜の空に上がる花火で、広がった光はパラパラとその姿を消して行く。
「あれ!?今日花火大会だっけ?」
「うん、そうだよ」
「え?お前いいの?彼女は?俺と飲んでる場合じゃねぇじゃん!誘わなくて良かったのかよ?」
ついビックリして、まくし立てるようにそう言ってしまったけど。何も言わずに立ちあがってベランダへ出て行くこいつの後を、俺もそれ以上何も言わずについて行く。
「もう別れたよ」
「え?」
少しの沈黙の後。次々に上がる花火を見ているとそんな言葉が聞こえてきて、光に照らされた横顔をそっと覗いてみるとそれがゆっくりとこちらを向く。
「お前と一緒に見たかったんだ」
そう言って笑う顔は俺の大好きなそれで。
ずっと、彼女がいるからと諦めていたはずのそれだった。
「殺し文句かよ…」
「ん?」
「…なんでもない」
花火の音にかき消された言葉は、君に届いたのだろうか。
それでも…
「俺もお前と一緒に見れて良かった」
無い物ねだりと諦めていたこの想いのたどり着く先が、もしも手の届くところにあるのなら。もう少しだけでいい、君のそばにいさせて…。
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