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その時は突然に
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「上がりまーす。お疲れ様でした。」
「はーい、お疲れ様でした。」
ここはとあるコンビニ。そして俺はとあるアルバイト。時刻は22時。蝉は鳴くのを止め、草から別の虫の鳴き声が聞こえる。
制服から着替えた俺は、Tシャツにジーパン、スニーカー…と、どこにでもいる男子大学生だ。
夜になった街は、蒸し暑さだけを残して去って行った太陽が憎い程暑い。
コンビニの裏から出て、外に出る。
見知らぬ少年が立っていた。塾帰りの高校生かな、何て考えながら通り抜けようとする……。
「あの、田辺敦也(たなべ あつや)君だよね?」
目が大きくて、俺よりもか細く背が低い少年。何かを決心したような表情でそう問われた。
「え……まあ。田辺、です。」
唐突でそれくらいしか応えられなかった。そもそも、このか弱い少年は誰なんだ。
「良かった。俺は、あんたと同じ大学の増村真澄(ますむら ますみ)。学科も一緒だ。」
ニッコリと笑って見せた増村真澄。あどけない感じが可愛らしいなとか、名前の語呂がいいなとか思った。
「本題何だけど…」
目の前の俺よりも下にある瞳が揺らぐ。
「田辺、あんたが好きだ!俺と付き合え!」
言い切った。そんな表情をする増村真澄。
気持ちが良いくらいにさっぱりしている。……て。
いやいやいやいや!
「ちょっと待て!いろいろ問題がある!」
「何だよ。」きょとんとした表情。
「俺は男。増村真澄、お前も……」
「男だ。」
素晴らしくクリアな解答だ。あどけない顔のくせに、中身は男らしい様だ。
「男同士で何しようってんだよ。俺は女の子が好きだ!」
目の前でムッとする増村真澄。
「俺だって最初はそうだったよ!でも、田辺。あんたと出会って俺は…俺は…あんたとじゃなきゃ恋愛が出来なくなった。」
俺の中を貫く様な真っ直ぐとした目に、一瞬怯む。
「なっ!」
「とりあえず……明日!明日の2限はあんたと同じ授業だから、授業終わりの昼休みに返事しろ!」
そう言うと、走って暗闇の中を駆けて行った。
そして、一人取り残された俺。
「えっと…夢、かな。」
そう思う事にし、家へと帰った。
田辺敦也、20歳。人生で初めて受けた告白は、男からのものだった。
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