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そう言えば
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「そう言えばさ、増村って自分のこと”僕”とかって言ってたっけ? なんか、コンビニで出会った時はもっと凛々しかった気がするんだけれど。」
増村が作ってくれた弁当を開けながら、ふと気づいたことを話してみると、ギクリとした君の表情。
「嫌だな。僕はずっと”僕”だよ。」
顔を引きつらせながら笑う君。
「そうだっけ?」
「そうだよ。なに? 気のせいじゃないかな?」
いや、やっぱり気のせいじゃない。
「それより田辺君、お弁当どう?」
上目遣いで俺を見る君に急かされながら、弁当の中身を口に運ぶ。
「うん。お前って料理うまいんだな。美味しいよ。」
「本当?!」パァっと輝く目。
本当に美味しかった。でも、俺は見逃してなんかいない。手に絆創膏が何枚か貼られていることを。相当頑張って作ったんだろうな。
俺がじっと手を見ていたのに気づいたのか、ぱっと手を隠す君。別に隠さなくてもいいのに。可笑しくてついつい笑ってしまう。
「田辺君?」
「ああ、ごめん。増村って可愛いよな。」
「え?」
見る見る間に白い肌が赤色に染まる。
その様子を見て気づいた。今とんでもない事を口にしてしまったのかもしれない、と。
「……嬉しい。」
どんな反応が返ってくるのか不安気に君を見れば、そう返される。
「田辺君にそう言ってもらえるとすごく嬉しいよ。」
ニッコリと微笑むその姿は、やっぱり幼くて、そして可愛らしかった。
男を可愛らしいと表現するとか、俺はどうかしているのかもしれないが、そう思わざるを得ない程だった。
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