アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
コンビニにて
-
今日は日曜日。昨日は君の作ってくれた弁当を一緒に食べて、色々と話していたらあっという間に23時になり、家に帰った。
そして今はその20時間後の夜20時。俺はコンビニにてアルバイト中だ。あと2時間経てばバイトも終わる、そんな時だった。
「いらっしゃ……い、ませ。」
独特のドアが開く音が鳴り響き、そちらの方に目を向けると君がいた。まあ、家から一番近いコンビニがここだから、君と会うこともそんなに不思議なことではない。そうなのだけれど、やっぱり会うと感じる、ぎこちなさ。増村もチラチラこちらを伺いながら商品を見て回っている。
プハッ
何だよアイツ、かなりキョドってんじゃん。
そんなことを考えていたせいか、お会計をしていた客からかなり訝しい表情をされる。
いけない、いけない。今は仕事中で、プライベートとは違うんだ。顔には出すな、顔には。
心でそう決めたものの、やはり気になって君を見てしまう。たまに君と目が合うと、恥ずかしそうに目をそらされる。それならば、最初っから見なければいいのに。声をかけてやりたいというもどかしい思いに駆られる。
しばらくすると、客もほぼいなくなった。そして、丁度俺の休憩時間が来た。
「休憩どうぞ。」
一緒に入っていたバイトの人からそう言われ、休憩に入る。着替えて裏のドアから外に出たあと、店内の中へと歩く。
機械音が鳴り響く。
君と目があう。
俺は、完全に中には入らずに、増村に手招きをした。それに気づいて君は急いで店の外へ出る。
「あ、田辺君、お疲れ。」
「うん、ありがとう。お疲れ。」
なぜか君はモジモジしている。そして、手に持っているものに目が止まった。
「増村、今日どうした? 何か持ってるし。」
「え、と……」
顔を真っ赤にして戸惑う姿。かと思えば、手に持っていたタッパのようなものを俺の目の前にいきなり突きつけた。
「これ、食え!!」
「はい?」
意味が分からなくて変な声が出た。君はお構いなしに、俺の様子に苛立ちながらもタッパをグイグイ押し付ける。
「昨日夜遅くまで付き合わせたし、疲れたろ? だから、これ、やる。」
どうやら、タッパのなかはお手製のレモンのはちみつ漬けのようだ。
プハハッ
可笑しくて笑ってしまう。
「またそうやってアンタは笑う。」
一瞬で不機嫌な顔をされた。
「ごめん、増村があまりにも必死すぎるから。あとさ、チョイスがレモンのはちみつ漬けって! 高校野球部のマネージャーかよ!!」
笑いすぎて涙が出てきた。ああ、やっぱり増村って最高。
「疲労回復には定番だろーが?!」
ムッとした表情でぼやかれる。
「うん。まあ、そういうことにしておくよ。」
「そういうことってな「ありがと。」」
頭をポンポンと撫でて宥めれば大人しくなる。威勢のよい態度から急変する君の姿。こういう姿も面白い。
「ニヤニヤすんな。」
君は頭に乗せていた俺の手を払って、強がってみせる。俺は、そんな君に満面の笑みを見せていたと思う。
「そろそろ休憩が終わるから、またな。」
「あ、ああ。」
「ちゃんと食うから安心しろ。」
「バイト中そんな口元ゆるゆるでレジとかすんなよ。じゃあな。」
君と俺は互いに背を向き合う。数歩歩いたあとで、小さく「昨日はありがとな。」と聞こえた。急いで振り向くも、君はそのまま真っ直ぐ歩いて行ってしまう。だから俺も、前を向き直して小さく言った。
「どういたしまして。」
「どうしたの、それ。」
裏のドアから入れば、たまたまバックヤードに入ってきた夜勤の田中さんと会う。
「差し入れです。」
なんだろう、こういうの結構恥ずかしいもんだな。そう思いながら、タッパの蓋を開ける。
「一緒にどうですか? 食べます?」
「いいよ。田辺君の為のもんだろ?」
にっこりと微笑んで、店内へと出て行った。一人取り残された俺はヒラヒラしている扉に言う。
「ええ、そうですね。」
休憩時間があと5分残っていたので、それを食べてみた。
酸味が強くて食べれたものではなかった。
「ぶきっちょ。」
一人、甘い蜜だけを残しているタッパにそう囁いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
12 / 19