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君が好きとか言うから
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”カシャン”
君がスプーンを皿の上に置いた音が耳に響く。
現実を突きつけられた俺は、ただただ黙っていることしかできない。沈黙を破ったのは君だった。
「俺は、チャーハンが好き。ハンバーグも好き。甘いものはなんでも好き。コンビニスイーツとかも好き。経済学史が好き。川辺を散歩して新鮮な空気を吸うのが好き。好きな人と一緒にいれた日々も好き。」
大きく息を吐く。
「好きな人は、もちろん君。」
真剣な眼差しが俺の心を突き刺す。
「アンタ、言ったよな? 俺のことがあまり分からないから友達になりたいって。」
沈黙を同意ととった君は空になった皿を見つめて続ける。
「嬉しかった。本当に。」
今にも泣きそうになるその表情に、胸が締め付けられる。
「男からの告白なんて、普通気持ち悪がるだろ? でも俺、知ってたんだ。偏見ってのがアンタの一番嫌いなものだって。だから、アンタが俺を拒絶出来ないことは知っていた。でもさ、笑顔で俺のことを知りたいと言ってくれた、あの時。予想もしてなかった。嬉しかったんだよ。」
ツウっと君の頬を伝って落ちる涙。
苦しい。
苦しい。
苦しい。
どこから来ているのか分からない苦しみに、目頭が熱くなる。
「なんで、アンタが泣きそうな顔になるんだよ。」
俺を見ていた君は、一言俺にそう言った後
泣いた。
君を泣かせているものは何?
君を困った笑顔にさせているのは、誰?
そんなことは、嫌でもわかる。
全部、俺。
君が俺を好きだと言ったあの日から、俺たちはお互いを知っていった。
君のまめで計画的な姿も、不器用な姿も、ひたむきに頑張っている姿も、寝顔が穏やかで可愛いということも、言葉は荒いけど心が乙女だっていうことも。そして、君が俺のことを好きでいてくれているということも全て、あの日から知ったこと。
いつの間にか、君の反応を考えて口元が緩んでいたり、君が女の子と仲良く話すのを邪魔していたり、君の好きなものは何か一日中考えていたり、気づけば俺の中で君は大きな存在になっていた。
「ます、むら……」
喉に苦しい何かが詰まっていて、掠れる声。君はポツリと切なく涙を落としながら、俺を見てくれた。切なげに揺れる君の目。
「な、んだよ。」
その姿を見て、決心した。
「もっと、君を知りたい……」
目から熱いものが溢れ出る。まるで、熱い気持ちが収まらないみたいにどんどん溢れてくる。
「だから……だから、俺ともっと一緒にいて、増村」
グニャグニャになった視界からなんとか君を見つけ出せば、目を見開いて固まっている姿があった。そして、頬を紅潮させてボソリと言うのだった。
「それなら、俺と付き合えばいいだろ。」
俺はその一言に頷く。
君が好きとか言うから、俺も君を好きになる。
『君が好きとか言うから』 終わり
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