アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
兄ちゃんの気持ちはどうなると思ってんの
-
今日は終業式。
いつもなら弟と一緒にいくけど、今日珍しく弟は俺を起こしにこなかったし、俺は遅刻だし、家に弟はいなかったから先に行ったみたいだ。気まずいからなのか、俺が病み上がりだから気を使ったのか、どっちにしろ気に食わないんだけど。
ちゃんと朝食って行ったのかな、と気になって炊飯器の中を見ても、置いてある食パンを見ても、…減ってない。起こせよ、バカか。
モヤモヤしたまま急いで学校に向かうと、ギリギリ終業式に間に合った。髪もセットしてないからぺちゃんこだし、「え?誰?」みたいな目でクラスメイトに見られた。俺のアイデンティティは髪型か!ってツッコミいれてやりたい。
クソ長い校長の話を聞きながらウトウトしてたらいつの間にか終業式は終わってて、ゾロゾロと全生徒が教室に帰るために群がる出入り口をぼーっと眺めていると、弟をみつけた。顔を赤くした小さめの女の子に声をかけられた弟はぽりぽりと頬をかきながら、二人で裏口に向かっていった。あ、告白か。ちくり、と胸になにか突き刺さったような痛みが走った。ん?なんで?弟の成長を目の当たりにしてちょっとビックリしただけだ、と唾を飲み込んで、俺は群れの減った出入り口から体育館を出た。
教室に戻るため廊下を歩いていると、さっきの女の子と弟が裏庭で話しているのが見えた。あ、完全に告白だ。窓の閉まった廊下から見えるだけで、二人がなにを話しているのか全く聞こえないけど、手紙を受け取った弟は笑顔でなにか話していた。その直後女の子もにっこりと嬉しそうに微笑む、え、うそ、
「オッケーしたの…?」
思わず口から零れた言葉にゾッとした。そりゃあんな可愛い子に告られたらオッケーするわ、男なら。なにショックうけてるんだ?俺。
なんだよ、俺ばっかり悩んで損した。よかったよかった、お前もようやく目を覚ましたのか弟よ。
………。
なんだよ、嘘つき。俺のことすきって言ったくせに。結局誰でもよかったんじゃねぇか。兄貴を混乱させるんじゃないよ全く。
ぎゅっと胸が締め付けられる。昨日あいつのあの眼差しに騙されなくて本当によかった。今日からは家でもセクハラされなくなるし、彼女の惚気話とか聞かされるようになんだろーな。はいはいおめでと、リア充が増えていって困るぜほんと。
「…宮内くん」
「え??あ、王子様、びっくりした」
「えぇー?王子様?」
「ううん、なんでもない。なに?」
「なんか、凄い不機嫌そうだけど、どうかした?」
不機嫌そう?俺が?
喜ばしいことが起きたのに?俺が?不機嫌?
そんなはずない、と窓ガラスに映る自分の顔を見ると、それはそれはひっでぇ顔をしてた。ブスッとした、というか、なんというか。
「いやー、弟がね?告られてオッケーしてんの見ちゃってさ、俺はモテねぇのに弟はモテるからなんか羨ましくって。」
「? 優司くんはオッケーなんてしないよ?」
「今してたよ」
「…見間違い、だとおもう。優司くんは宮内くんのことがスキだから」
「………はい?あいつお前にそんな話してんの?」
「見てたら分かるよ」
ふふ、と微笑んだ王子様、腹立つぐらい完璧な顔のパーツを眺めながら、この不思議な雰囲気にのまれそうになる。
「ま、兄弟だしな?。あいつが俺をスキなのは仕方ないわ」
「……スキって、言われてないの?」
「……王子様、そこは流してくれよ」
「あ、ごめんね、俺空気よめないって恋にもよく言われる」
「はぁ、まったく不思議の国から来たの?キミは。……弟なんだよね。大事な」
「え、う、うん」
もうこのさい誰でもいい、っていうか、この王子様、西浦を溺愛してるだけの鈍感だと思ってたけど、以外と人のこと見てんな。バレてるんだから言ってみてもいいよな。
「いきなり恋愛対象にみれるもんじゃないよ」
「…そう、かな?」
「そうだよ。だから、あいつに彼女できたことは嬉しい事なんだ。…」
なのになんでこう、ぼたぼたと、アホみたいに俺の目から涙がでるわけ。泣き虫はガキのころ、卒業したはずなんだけど、なんで
慌てた顔した王子様はハンカチをとり出して、俺の涙をふいてくれた。「イケメンだね、惚れそう。」というと「嘘はだめだよ」と叱られた。叱られるなんて久しぶりすぎて笑った。
「ありがとね、王子様。スッキリしたよ」
そういうと王子様はぽんぽんと俺の頭を撫でてきた。ビックリしてバッと顔をあげると「いいとおもう、兄弟でも」と言われた。よくないよ、兄弟なんだから、と言おうとすると
「だって、俺もスキが抑えられなかったから」
と言われて、なにも言い返せなかった。
はぁ、俺のほうが最悪だったしアホだったみたいだね。認めたくなかっただけだ、俺はあいつを受け入れたらダメだと言い聞かせていたから。今更弟相手にときめきなんて感じないし、べつに付き合いたいとも思わない。むしろ何?ふたりでデートしたりすんの?きもっ、想像しただけでウケる。そうじゃなくてただ、あいつが他の人間を愛してる想像ができない。自覚した瞬間失恋かよ、ほっんとついてないし恋愛運最悪だよね、俺って。ていうかこれって恋なの?なんだかただ弟を取られたくないだけのブラコンと変わらないと思うんだけど。…まあでもこの結末でも、弟がいいならそれでいいや。そうだろ?俺はあいつの兄貴、なんだから。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
16 / 19