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「 あー、」
口を開けて待つ正太郎に巫女都はハァとため息を吐く。
「 ねぇ正ちゃん。もう自分で食べてよー。左手使い難いんだからー。」
手を洗い、作ってきた弁当を広げた所、先程亮輔に自らの手で食べさせた巫女都を見て嫉妬した正太郎が、咀嚼しては飲み込み口を開けて待つを繰り返すのを巫女都はいい加減うんざりしていた。
「 嫌だね。あいつにはやって俺にはやってくんないんだ...。グレてやるからな!!」
「 はいはい。正ちゃんはもう殆んどグレてるよ...。それに、先輩は試合後で手気にしてたからああしただけで、正ちゃんは手綺麗でしょ?しかも箸だし...。」
「関係無いね。大体巫女はあいつに気許し過ぎなんだよ!んぐっ!!」
ガミガミ怒り出した正太郎の口に巫女都はおかずを突っ込み黙らせる。もう聞き飽きたから。
「正ちゃんは誰彼構わず疑いすぎ!アレも駄目コレも駄目って僕の方がグレちゃうよ!」
ジト目で見てくる巫女都の言葉に焦り、正太郎は残りの弁当を自分で食べた。
暫くして午後の部が始まり、準決勝まで勝ち上がった亮輔も苦戦を強いられている。
「...流石にここまで来ると簡単には行かないね。」
固唾を呑み見守る巫女都と同様に、正太郎もいつの間にか真剣な面持ちで試合の行く末を見守っていた。
「 あっ!? 」
「 マズい!? 」
亮輔が相手に技を掛けられ倒されたが、寸での所で身体を翻す。
『 有効っ! 』
審判の判定に巫女都も正太郎もホッと息を抜く。
「....頑張って。」
巫女都が祈るように見つめる中、亮輔の顔に焦りの色が見え始め、必至に相手の隙を窺っいると、指導を取られてしまう。この俄然不利な状況に、残り時間をチラと見た正太郎は、思わずバッと立ち上がり、観覧席から怒声のような大声で亮輔に叫んだ。
「 おらぁっ!!俺に優勝するって啖呵切ったのは何処のどいつだっ!!シケた面してねぇでしっかりしろっ!!」
「 正ちゃん!?」
余りの大声に周囲の視線が集まり、巫女都は慌てて正太郎の服を引っ張って座らせると、周りにペコペコ頭を下げた。
正太郎の叱咤を受け亮輔はふと笑うと、その目に鋭気が差した次の瞬間、相手の懐に入り襟を取って華麗な大外刈を掛け、スパンッ!!と相手が倒れた。
『 一本っ!! 』
審判の声が響き、互いに礼をすると亮輔は此方を向き、正太郎に笑いかける。それを見た正太郎は鼻で笑うと不遜な態度で言う。
「 決勝で泣きを見やがれ馬鹿野郎。」
判定でた時、拳握り締めて喜んでたくせに。素直じゃないんだから。
巫女都は正太郎を見ながらそんな事を思っていた。
手に汗握る攻防戦も残すところ後1つという所で、やはり正太郎が考えていた通りの人物が対戦相手として上がって来る。
....やっぱ対戦相手はあいつか。良く頑張ってたけど、奴もここまでだな。
正太郎がそう懸念していると巫女都が妙な事を言い出す。
「...さっきのが事実上の決勝戦だったかもね。もう、谷本先輩の優勝で間違いないかな。」
「 は?なに言ってんだ?あいつ、インターハイの優勝常連校の主将だぞ?知らねぇのか?」
「 勿論知ってるよ。けど去年末故障してから試合出るの初めてなんだって。先月のインターハイもメンバーから外されてたし、ほら、今も股関節庇いながら歩いてる。あれじゃ、谷本先輩には勝てないよ。」
巫女都の言葉を聞き、正太郎の背中に嫌な汗が伝う。これは実にマズい状況なんじゃね?
...マジか。おいそこのおまえ!そういう情報は予め俺に伝えておけよ!報告・連絡・相談、ホウレンソウ!基本の基だろ!!おまえに賭けてまんまとあいつの言い分飲んだ上、応援までしちまったじゃねぇかよっ!!
正太郎が見知らぬ相手に自己中心的な事を思っている中取り組みは始まり、巫女都の読み通り亮輔に断然有利な運びで試合は進む。
制限時間が迫る中、固唾を呑んで見守っていた正太郎が我慢の限界を迎え、先程と同様に立ち上がり叫びだした。
「 おらーっ!!おまえそれでもインターハイ優勝常連校の主将かっ!! 気合い入れろっ!!プライドはどうしたっ!!足なんか使い物になんなくなってもかまわねぇから今すぐ谷本をぶっ倒せっ!!!」
「 ちょっと正ちゃんっ!?もー座ってーっ!!」
巫女都の制止もお構い無しに正太郎が吠える中、亮輔が綺麗な一本背負いが決めた。
『 一本っ!!』
審判の判定の声が響くと、正太郎はストンッと座り込み、真っ白に燃え尽きた。
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