アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
121
-
「じゃあ、行ってくるね。」
柔道大会の翌週土曜日、約束通り亮輔と出掛ける巫女都を正太郎は見送っていた。
「 ああ。早く帰れよ。」
「 うん、じゃあね!」
家の前で正太郎と別れ、近所のコンビニまで迎えに来てくれると言う亮輔の言葉に従い、巫女都はそこへ向かう。
...正ちゃん、今日はやけにあっさりしてたなぁ。絶対くどくど言ってくると思ったんだけどなぁ。
正太郎に小言を言われると思い、約束より大分早く家を出た巫女都がコンビニに着くと、雑誌のコーナーに居る亮輔を見つけて慌てて中に入った。
コンビニの中で巫女都が亮輔に待たせた事を詫びて雑談をしているが、その様子を正太郎はコンビニの外から見ている。
お、居た居た!...ストーカーチックだが仕方ねぇ。しかし、松葉杖ダリぃな。巫女の足の速度から考えると着いてくのは問題無さそうだけど、目立つかんな。絶対バレねぇ様にしねぇと...。
亮輔が大会で優勝を決めたのに、泣きを入れて約束を反故にして貰うのはプライドが許さない。かと言って約束通り二人きりで出掛けさせるのも忍びないと、正太郎は一定の距離を置いて巫女都に着いて行く事を決めた。
物陰に隠れて見ていると、2人がコンビニから出てくるのが見えて正太郎は松葉杖を握り直して歩く準備をする。
「 わぁっ!格好いいっ!!」
「...桐谷骨折してるし、高速は20歳にならないと2人乗り出来ないから下路走らなくちゃで、どうかなとも思ったんだけど、...どうしても桐谷を後ろに乗せて走りたかったんだ。...平気か?」
「 全然大丈夫です!僕、バイクの2人乗り初めて!ワクワクしちゃうっ!!」
申し訳無さそうに言う亮輔に巫女都はご機嫌で返すと、そんな巫女都の髪をサラッとと撫でた亮輔がヘルメットを渡した。
...格好いいだと!?あいつの何処が格好いいんだ!ただのムッツリ野郎じゃねぇか!...にしても、ここだとなに話してんのか聞こえねぇな...。...っ、やべぇ!?
2人の会話を正太郎はコンビニの角から耳を欹てて聞いていたが、思わず身を乗り出した時、松葉杖を離してしまい、カランと音を立てて落下した松葉杖を慌てて拾い身を隠す。
ブオンッと重低音が聞こえ、そーと角から顔を出した瞬間、正太郎は驚き目を見開いた。
...なっ!?ビックスクーターだとっ!?
亮輔の後ろに乗りしがみつく巫女都を見て、正太郎は慌てて追おうとしたが、ビックスクーターと松葉杖を交互に見て思う。
....ぜってぇ追い付けねぇ。
重低音を響かせて走り始めたビックスクーターに向かって正太郎は叫んだ。
「 巫女ぉーっ!!!! 」
小さくなっていく2人に、正太郎は為す術無くその場に留まった。
「........ハァ。..........帰ろ」
ひょこひょこと松葉杖を付き家路を戻る正太郎の背中は、哀愁が漂っていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
121 / 217