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東照宮を後にし、いろは坂を登り華厳の滝を見に来た2人はその澄んだ空気を堪能していた。
「 んーっ!! 凄っいマイナスイオン浴びてる気がします!」
伸びをしながら言う巫女都を見て亮輔は笑い、次の場所に向かう途中、巫女都は亮輔に頼む。
「 先輩、あそこ寄って貰ってもいいですか?あそこの塩羊羮、正ちゃん大好きなんです。」
「 ...ああ。...佐倉が羊羮ね...想像つかないな。」
「 ふふ、普通の羊羮は食べないのに、塩羊羮は凄く好きなんですよ。変ですよねぇ?」
日光に着いた時から、正太郎にこの塩羊羮を買っていこうと決めていた巫女都は、ご満悦の様子だ。
正ちゃん喜ぶかなぁ!
中禅寺湖付近に着くと、亮輔が言う。
「 昼飯、あそこで食べよう。腹へっただろ?」
「 はい。 ペコペコです!」
亮輔のおすすめでソースかつ丼を注文し、2人揃って頂きますと手を合わせると巫女都は箸をつける前に、自分の丼からかつとご飯を亮輔の丼に3分の1程移す。
「...桐谷?...かつ丼嫌いだった?」
亮輔の言葉にハッとした巫女都は苦笑する。つい正太郎といる気になってやってしまってた。
「 すみませんっ!...つい癖で。...いつも、食べきれないから先に正ちゃんの所に移しちゃうんです...。先輩、食べて貰えます...?」
躊躇いがちに言う巫女都に、亮輔は笑う。
「 沢山食べないと、大きくなれないぞ?」
「う"っ...、...食べても、もう無理だと思います...。」
「ははっ、...じゃあ遠慮無く。桐谷の分まで食べてるから佐倉はあんなにデカいんだな。」
「 違いますよ!正ちゃん家は皆大きいんです。おじさんなんか192㎝もあって、足も32㎝なんですよ!よっちゃん...あ、おばさんが、1足出てるだけで玄関が狭い感じがするって言ってますよ?」
巫女都の話しに確かにと言って亮輔は笑った。
食事を終え、2人で中禅寺湖を眺めていた時、巫女都は亮輔の進路を聞いた。
「 先輩は何処の大学に行くんですか?」
「 一応、東海大。柔道の盛んな大学と思ってね。桐谷はもう決めてるの?」
「僕は神職の資格を取る為に神道学科が有る大学に。って言っても2校しか無いからどちらかですけど」
「 じゃあ、佐倉とは別々になるんだな。」
「 え? あ、いえ、正ちゃんも同じ所に行くと思います」
「佐倉の家も神社なの?」
訝しげに聞く亮輔に巫女都は笑って、お隣だけど違いますよ。と答えた。
すると亮輔にじゃあ何故同じ所に行くのかを聞かれ、巫女都は芳美が同じ所に行かせると言っていたからだと笑って答えると、亮輔は少し考えてから真剣な顔で聞いてきた。
「そこに佐倉の意志ってあるの...?桐谷、佐倉が将来やりたい事とか聞いたことある?」
亮輔の言葉に巫女都は記憶を呼び起こす。
小学校の時はスポーツ選手だった。中学の時は高校行かずにおじさんと同じ鳶になるって言ってよっちゃんに反対されてた。......今は?
今の正太郎の将来の夢が分からず、必至に記憶を探っていて気が付く。一緒に居る事が当たり前になっていて、必然的に正太郎も自分と同じ選択をすると思い込んでいたと。
その事に亮輔の言葉で気が付いた巫女都は暫し茫然となった。
.......正ちゃんの意志。
そんな巫女都の様子を見た亮輔は真摯に言う。
「 一緒に居たいだけで先を決めたら駄目だと思う。桐谷が家を継ぐ為に資格を取ると決めてる様に、佐倉にもやりたい事があるかも知れないぞ?...生きる為の大事な選択だし、先は分からない。5年後、10年後一緒に居るとは限らないんだ。」
「そんな、僕たちはずっと一緒に居ます!ずっと...」
「人の気持ちは変わるものだ。...例え話だよ。そんな顔させるつもり無かったんだ、...すまん」
不安げな顔をする巫女都に亮輔は困った顔で言ったが、その後は何を話しても、何処を見ても巫女都はどこか上の空だった。
待ち合わせたコンビニで亮輔にお礼を言い別れると、巫女都は塩羊羮片手に真っ直ぐ正太郎の家に向かった。
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