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迎えた大祭式例祭当日。巫女都は連日昼夜問わず暇さえあれば神楽舞いの練習に明け暮れていた。
今日も早朝から一人板の間で、最終調整と練習がてら士気を高めていたが、身体が思うように動かず焦燥感が募っていた。
...なんだろ、右手云々じゃなく身体が怠い。
やればやるだけ上手くいかない事に焦り、時間ばかりが過ぎて行く。
「 おっ、やってんな?...どした、巫女?緊張してんのか?」
例祭の手伝いに駆り出された正太郎が巫女都の元を訪れ、いつもと様子の違う巫女都を見てそう聞く。
「 ...正ちゃん。...上手く、出来ないの...。昨日までは出来たのに、今朝になったら身体が思うように動かない。...どうしよ。」
俺は憔悴しきっている巫女の側まで行くと、その顔をじっと見て、ハッとして巫女額に手を当てた。
「おまっ!? 熱あんじゃねぇかよ!!」
「....熱...?...だからこんなに怠いのかぁ。」
触った額の熱さに正太郎は驚き、巫女都は怠さの正体に納得した。
「あら、正太郎おはよ。今日は宜しくね!しっかり働きなさいよ?巫女都、そろそろメイクしないと。」
おばちゃんが板の間に巫女を迎えに来てそう言うのを聞き、俺は慌てる。こんな熱じゃ無理だ。
「 ...巫女、熱あるみたいなんだけど。」
「 えっ!?...やだ、本当....。郁子じゃ無理だろうし、...どうしようかしら。」
正太郎の言葉に弾かれた様に巫女都の額に手を当てた琴子がそれを認め、代役を考えながら困った顔をする。
「...ママ、大丈夫。やれるよ。...神楽舞い終わったら直ぐ休むから...。」
「...巫女都。本当に大丈夫?...でも、そうしてくれると助かるわ。メイクしたらぎりぎりまで休んでなさい。」
琴子の言付け通り、メイクをし、毛先にエクステンションを付けた艶やかな黒髪を一纏めに結うと巫女都はまた板の間で神楽舞いの確認を始める。
手伝いの合間を縫って巫女都の様子を見に来た正太郎はそれを見て驚いた。
「 巫女、休んでろって言われただろ!...暖房も入れてねぇし!」
慌てて暖房のリモコンを手に取った正太郎を巫女都は制す。今は身体を暖めたくない。
「 入れないで!...身体暖めたら...もう、動けなくなっちゃう。」
「...巫女、...分かった」
必至に言う巫女都の言葉に、正太郎は心配そうな面持ちで了承したが、先程よりも息が荒く、化粧のそれでは無い顔の赤さに正太郎の心配は募る一方だった。
出番が近づくに連れ熱でボーッとしてくる頭を巫女都は軽く振り、すっと立ち上がる。
...アレ、やって欲しいけど、正ちゃんに感染ったら嫌だから今日は我慢しよう。
「...そろそろ行くね。」
緊張で震える手をキュッと握りしめ、微笑んでそう言った巫女都を正太郎はフワッと抱き締めその背を擦った。
「 ほら、忘れもんだ。」
そう言いながら正太郎は巫女都の額に自分の額を合わせて目を閉じる。
「 ...感染っちゃうよ?」
「 大丈夫だ。...ほら、集中しろ。...巫女なら大丈夫、出来る。大丈夫だ!ちゃんと見てるから行ってこい!」
僕なら出来る。正ちゃんが言うんだから絶対大丈夫。...うん。 大丈夫!
額を合わせたままふうーと息を吐いた巫女都に正太郎は堪らず口づけた。
「 んっ!?...ん... 」
唇を離すと、惚ける巫女都に正太郎はふと笑い、巫女都の唇を軽く拭う。
「 凄げぇ綺麗だ。」
正太郎のその言葉に巫女都は嬉しそうに笑った。
「 行ってきます。」
「 ああ。紅、注し直してけよ?とれちまったから」
正太郎の言葉に頷き歩みを進めた巫女都の脚は、身体の怠さが嘘の様に軽やかだった。
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