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翌朝、巫女都は巫女装束に着替えいつもより早く神社へ向かった。
「 うぅぅ~っ、...冷たい 」
巫女都は草履と足袋を脱いで神社の入り口の端に置くと、裸足で拝殿までの道程を進み、拝殿、本堂まで進むと参拝をする。
正ちゃんが早く良くなります様に!
予め持ってきた竹串を置くとまた神社の入り口までの道程を戻った。
巫女都は正太郎の為に御百度参りをしていた。
会いたい気持ちは募る一方で、熱で辛いかもしれないからと電話も出来ず、正太郎の為に自分が出来る事は何かを考えた結果が御百度参りだ。
1月の石畳は刺す様に冷たく、早朝という時間帯も相まって巫女都の体温を容赦無く奪っていく。
けれど正太郎を想えば凍てつく様な寒さにも挫けず御百度参りを続けられた。
「....うぅぅぅ、寒っ!巫女都なにやってるのかしら、遅刻しちゃうわよ...。あ、居た居た。っ!?」
境内の掃除に行ったきり戻らない巫女都を呼びに来た琴子が、巫女都の姿を見つけて声を掛け様としたが思い留まる。
...何あれ...御百度参り?まったくあの子は。正太郎の事になると周りが見えなくなっちゃうんだから。神頼みなんてしなくてもインフルエンザなんて放っといても治るわよ。
琴子は呆れた様に巫女都を見つめたが、一生懸命石畳を踏む巫女都に苦笑しながら声を掛ける事無く母屋へ戻った。
暫くして戻って来た巫女都は玄関に温かい湯の張ってある桶と、石鹸とタオルを見つけて胸がほっこりする。
...ママ。気づいてたんだ、
その桶で足を綺麗に洗い支度をすると、佐倉家へ向かいノートを受け取った。
「 あ、巫女ちゃん。これ智くんに渡してって正太郎が。」
芳美から渡された、ビニールに入った小さなビンを巫女都は小首を傾げて見つめる。
「 なにこれ? 」
「.....さぁ?...兎に角、巫女ちゃんは絶対に開けたらダメだって伝えてって。何かしらね?」
そのビンを訝しげに見るも、巫女都は言い付けに従い開ける事無く学校まで持って行く。
「 おはよ智くん。これ、正ちゃんから。」
学校へ着くと智の元へ行き、ノートとビニールに入ったビンを智に手渡した。
「 なにこれ? 」
同じように訝しげにそのビンについて聞く智に巫女都は分かんない。と言うと同時に廊下から名を呼ばれ、智の元を離れ、1人になった智はマジマジとそのビンを眺めると蓋を開け中の物を摘まみ上げた。
「なんだこれ...?...濡れた脱脂綿?訳分からん。」
1人ぼやくと正太郎からメッセージが入る。
【 巫女から渡されるビンに俺のインフルエンザ菌の入った唾が染み込ませてある脱脂綿が入ってる。それを巫女を呼び出した奴に1枚ずつくれてやれ】
「 う"ぇっ!? 馬鹿っ!!先にメッセ寄越せよっ!!あ"ー!!触っちまったじゃねぇかっクソボケっ!!」
慌ててビンを閉めると廊下の水道でじゃぶじゃぶ手を洗う智を巫女都はキョトンと見つめていた。
授業が始まると巫女都は自分のノートと共に、芳美から受け取った正太郎用のノートを開らこうと、ペラペラとページを捲ると、末ページが何かで張り付いており、そこを指でピッと剥がして開く。
「 っ!? ....っ。」
【 俺も会いたいよ。】
正太郎の雑な字で書かれた一文に、巫女都の視界は涙で歪む。上に書いてある自分の滲んだ文字を指でなぞると思った。
...正ちゃんも泣いたのかな、
寂しさと同時に愛しさが募り、会いたい気持ちに拍車が掛かった巫女都は、瞳に溜まる涙を溢さない様必至に堪える。
その文字の滲みが精子だとは露程も思って無かった巫女都は、早く良くなってと願いを込めて、何度もその染みを指で撫でていた。
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