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「 1日早いけど、卒業おめでとうございます!やっぱり先輩はここが一番思い入れがあります?」
僕は谷本先輩に連れられて柔道場に来ていた。
僕の言葉に先輩は「ここから全てが始まったんだ」と考え深そうに言った。
「ここで初めて会ったんだよお前に。」
「 そうでしたっけ?」
笑って言う巫女都に対して、亮輔は至極真面目な顔をする。
「 ああ。忘れもしないよ。桐谷が1年の体験入部で来た日、誰もがこんな華奢な奴が柔術なんてって鼻で笑ってた中、お前は当時の3年生を綺麗に投げ飛ばしたんだ。」
約2年程前の記憶を思い出しながら話す先輩に、僕はなんだか恥ずかしくなって苦笑した。
「 ふふ、そんな事もありましたねぇ。」
仰ぎ見た先輩の顔が余りにも真剣で、僕は少し驚いて動きを止めた。
「あの時からずっと桐谷の事が気になってた。話をしたいと思ったし、側に居たいと思った。」
「...あの、先輩?」
頬に手を添えられた僕が、先輩のいつもとは違う雰囲気に困惑してると、
「 愛してるんだ 」
「 っ!? 」
思っても見なかった告白に、僕が赤面して固まると、先輩はフワリと抱き締めてきて再度耳元で言われた。
「 桐谷を愛してる。」
真摯に告げられた亮輔の言葉に、巫女都はドキドキと胸が早音を打っているのを感じていた。
「 てめぇーっ!! 抱き締めてんじゃねぇ!!」
「 正ちゃんっ!? 痛いっ!痛いっ!痛ーいっ!!」
柔道場に勢い良く入って来た正太郎が亮輔から巫女都を引き離すと、その両頬をぎゅうぎゅうつねる。
「 痛くしてんだよっ!!頬染めてぽーっとしやがって!! 安っぽい言葉に騙されてんじゃねぇっ!!」
「 だ、だってっ、びっくりしちゃったんだもん...」
ご立腹の正ちゃんに苦笑すると、僕は先輩に向き直り頭を下げた。
「先輩の気持ち、嬉しいですけど、僕、正ちゃんが大好きなんです。だからその気持ちにお応えする事は出来ません」
「分かってる。ただ、きちんと言っておきたかったんだ。それから、諦める気は無いから、メダリストになったらもう一度、気持ち伝えに来る」
「...あ、はい。」
「 はいじゃねぇだろがっ!?てめぇはもう来んなよっ!!...行くぞ。」
グイグイ引っ張る正太郎に引き摺られながら、巫女都は亮輔に苦笑いで頭を下げた。
柔道場を出て尚、腕を引っ張る力を弛めない正太郎に巫女都は言う。
「...正ちゃん、痛いよぉ~」
「 るせえっ!簡単に靡きやがって!!油断も隙もあったもんじゃねぇなっ!!」
「靡いてないよ!...愛してるなんて言われたの、初めてだからびっくりしちゃったんだもん...」
巫女都に正太郎がジト目を向けてると、向こうから智がやって来て3人で教室へ戻った。
「巫女さっきのボタン出せ」
「 ボタン? 」
キョトンとしながら巫女都がボタン入りの袋を取渡すと、正太郎はそれを受け取って下校して行く3年生目掛けて窓から勢い良く撒きだした。
「 正ちゃんっ!!?ちょっ!?ダメだってば!!」
慌てて止めさせようと巫女都を尻目に正太郎は笑う。
「俺なりに祝福してやってんだよ!あれだ、結婚式のフラワーシャワーと一緒だ。おめでとさ~ん!!てめぇのボタンはてめぇで拾って帰れよ~っ!!」
「正ちゃんダメだってばーっ!!!」
「...おいおい、下の奴ら凄げぇ痛がってるぞ。」
呆れ顔の智の言葉を無視して俺はボタンを盛大に投げ続けた。
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