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「随分とご執心のご様子で。…たかが人間などに」
突然の訪問者である男は嫌味ったらしくそう笑うが、彼は取り立て怒りを表す事もなく平然と答える。
「アレは面白い」
「はぁ?どこがだ」
「抵抗はするが、決して屈する事はしない。例え私がアレの腕を切り落としたとしても、もがき苦しむだけで助けを乞う真似はしないだろうね。自らの罪を認め、それを受け入れようとする精神をお前は美しいと思わない?」
彼、ルシファーは美しいものを好んだ。
それは目に見える物だけに留まらず、言葉や動作、音などもそうだ。
元々は天使だったせいか、感受性豊かな彼はそれらを見つけるたび好んで手元に置く。
今回もその延長線だ。
「アレは強く気高く美しい。でも、果たしてそれがどこまで続くのか。私はアレの壊れる瞬間が見たくてたまらないんだよ」
「へぇ…。それは大層偏った嗜好だことで」
「偏ってるとは心外だな。お前にだって1つくらいあるだろう?アスタロト」
ルシファーにそう問われ、アスタロトはしばらく考え込みポツリと呟く。
「強いて言うならば…。オレは与える事を好む」
「与える?」
「ああ。その者にとって未知なる物を与え、その後どう変化していくのか…。大抵は壊れちまうが」
「なるほど。だったらお前も私とそう変わりはないね。結局、私達の根本は同じ」
なぜ自分がアダムに仕えねばならないのか。
ルシファーは神のその命令に背くだけの力が自分にはあると過信し、その結果神の手によって天から堕とされる事となった。
だが彼は後悔などしていない。
これで堂々と神に楯突く事ができる。
そして今の彼は、もっとも権力のある悪魔として多くの者を従える確かな地位にいる。
そんな彼が執着心を抱く一人の人間。
アスタロトはその人物に興味を抱いた。
「では、私はそろそろ出かけるよ。お前も自分の居場所へ戻るといい」
「ああ、そうする」
アスタロトは彼に短くそう答え、自分に背を向けたルシファーが気づかない程僅かな笑みを浮かべていた。
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