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「…………」
「どうした?」
「いや…、ちゃんとした部屋だなぁって」
奏が今までいた部屋はベッドと小さなシェルフが1つ、そしてその上にロウソクが置かれているだけで他には何もなかった。
窓も、音も、時計も、そして色も。
コンクリートを打ち付けただけの無機質な部屋に月日が分からない程長くいたせいか、アスタロトに案内された一見普通の部屋は奏に新鮮な印象を与えた。
「この部屋はお前の好きに使え。この建物内なら自由に出歩いていいが、勝手に外へ出ることは許さん」
「!繋がないの…?」
「生憎オレにそんな趣味はない。それとも繋いで欲しいか?」
そう問われた奏が慌てて首を横に振るとアスタロトはクスッと笑みを零す。
「すっかり体が冷えてしまったな。こっちへ来い、温めてやる」
「っ、あ…、あのさ」
「ん?」
奏をベッドに上がらせたアスタロトはそのままゆっくりと彼を押し倒した。
その眼差しが自分を包み込むようでどうにも落ち着かない。
「なんで……僕を助けたの?こんな事して……、後で大変な事にならない…?」
「なるだろうな」
「っ!だったらどうして…?」
「…………。何が聞きたい?」
「え……」
「オレは悪魔だ。愚かな人間を陥れ、蝕み、その身を滅ぼされる存在。そのオレに何を期待している?」
「っ……、何だろう…。自分でもよく分からない」
彼に見つめられると心臓が騒ぎ出し、振れられれば息が詰まりそうな程苦しくなる。
それを相手に、しかも悪魔に同じ事を期待するのは高望みだと分かっていた。
それでも僅かな期待を拭いきれず求めた答えは奏が予想していた通りだったが、やはり落胆は否めない。
「そんな顔をするな」
「……僕、どんな顔してる?」
「今にも涙を溢しそうだ」
「……ごめん、気にしないで…。あんたの好きにしてよ」
「カナデ」
「分かってる。分かってるから…」
多くを望めるほどの代償を自分は持ち合わせていない。
それを痛感し、今は自由になった手を伸ばした奏はアスタロト頬にそっと触れた。
「…ずっと、触りたかった。こうしてあんたに……触れてみたかった」
「…!お前はなぜ……」
「?──っン…」
何を言おうとしたのか。
アスタロトは最後まで告げないまま口付けをする。
"これでいいんだ"
奏は頭の中でそう何度も繰り返し思った。
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