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「──ああ。オレも好きだ。愛してる。だから早くここを開けて、お前に触れさせてくれ」
「ッ!!」
(違う…っ)
声も口調も彼のもの。だがその言葉は決定的に違いをみせた。
アスタロトは"愛してる"とは言わない。
奏がどんなにせがんでも決して言わなかったのには彼なりの信念があったからだ。
それを今、こんなにあっさりと言うはずがない。
奏は静かに一歩、また一歩と後ずさりその身を翻そうとした瞬間、カチャッと小さな音を立てて鍵が勝手に回りドアが開いた。
「ッ──!!」
「おかしいなァ…。彼の声そのものだったはずなのにどうして分かったの?」
楽しそうにクスクス笑うその声は最早アスタロトではない。
「ルシファー…」
"オレの結界を破れるのはルシファーただ1人。もし奴が現れたら出来る限り言う通りにしろ。アイツは自分の思い通りにいかない事を酷く嫌う"
アスタロトが残した助言は実に曖昧で不透明なものだったが、奏はその言葉を頭の中で何度も繰り返しながらルシファーの様子を窺った。
「私から離れている時間はさぞ至福だっただろうね。でももう生温い夢は終わりだ」
「僕を……どうするつもり…」
「さァて、どうしようか?磔にして全身の血を抜くなんてどう?血の気を失っていくお前は本当に美しいだろうね…。考えるだけでゾクゾクするよ」
ルシファーの歪んだ笑みは寒気がするほど残忍で美しい。
元は天使だった彼は自ら身を堕とし、その皮肉なまでの美貌と力で多くの悪魔を従える立場となった。
そんな彼が思い通りに出来なかった一人の人間。
その人物を目の前にしたルシファーは複雑な感情に揺れていた。
悲惨なまでに奏を壊したい思う欲望と、今すぐ彼を抱きたいと感じる欲求。
どちらもルシファーの本心だが、彼自身それが理解できなかった。
「……お前のせいだ」
「…!」
「こんなに私を掻き乱されたのは初めてだよ…。嫉妬し、恨み、それでも私はお前を手に入れないと気が済まない。これではまるで──」
"──人間みたいだ"
最後の言葉を喉の奥で呟き口を噤む。
いつの頃からか本当は分かっていた。
怯えや苦痛を色濃く宿し、諦めて正気を手放す事もせず全てを受け入れようとする奏に、まるで自分を受け入れているような気になっていた事を。
だがそれは全て勘違い──。
ルシファーの奏に対する執着は、そんな歪んだ恋心からきていた。
「これ以上……私を乱すな。お前なんてもう──消えてしまえ」
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