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birth.
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「なぜだと思う?」
アスタロトは身じろぐ奏にもう一度同じ質問をした。
それは今、目の前にいる彼が"彼"ではないと分かっていたからだ。
アスタロトは先を見通す力を持っている。
だがそんな彼ですら、今の奏がどんな考えを持ちどんな行動を起こすかは予知できず、いかなる状況になろうと対応できるよう探りを入れた。
だが、奏の答えはそんなアスタロトを遥かに上回る。
「どうだっていい」
「なに…?」
「あんたがなぜこんな事を仕組んだのか。なぜここにいるのか。そして僕はなぜこんな状態なのか。そんなのどうだっていい。今ここに存在してる僕が全てだ」
羞恥や罪悪が消え、代わりに純粋な欲だけが奏を支配し、操っている。
そして奏自身、そんな自分を受け入れている事にアスタロトは僅かに焦りを感じた。
今の彼が必要としているのはたった一人との深い結び付きではなく、強烈な快楽。
まるでアスタロトと過ごした時間が一過性の出来事のような物言いをした彼は変化が滲み出ていた。
だが今ならまだ間に合う。
アスタロトが手遅れではないと直感したのは、奏の視線が一瞬泳いだせいだ。
「一体どれだけの悪魔に抱かれた?いや、お前が強制的に抱かせたのか」
「…あんたに話す義理なんてない。これ以上用が無いならそこ、どいてくれない?邪魔なんだけど」
「オレが恐いか?」
「はぁ…?恐いだって?」
「まるですぐ逃げ出したいと言わんばかりの態度だからな。違うのか?」
「……違う。早く次の悪魔と交わりたいだけだよ」
そう言って奏は笑顔で虚勢を張る。
一刻も早くこの場から立ち去りたいという頭を見透かして尚も、廃屋の入口から退かないアスタロトに彼は警戒心を覗かせた。
「そうか…。ならばオレが相手をしよう」
「っ!?……嫌だ」
「ほう…。理由は?」
「あんたとは…シたくない」
「なぜ?」
「ただ気が向かないだけだよ。それ以外に理由なんかない。分かったらもう僕に構わないで──!?」
痺れを切らした奏がアスタロトの側を通り過ぎようとした時、関わりを拒む腕が何の前触れもなく強く掴まれ心臓が大きく跳ね上がる。
「立ち振る舞いは上出来だ。だがこれ以上好き勝手をされては困る」
「っ!僕が何をしようと…あんたには関係ない。僕を他の男達に与えて厄介払いしたかったんだろ!?だったら喜んで?僕はもう、あんた以外の男とでも平気で寝れる。自分の欲望に忠実で身勝手で不埒。あんたの望み通り、僕は"悪魔"になったんだ」
思っていた事を口にすると予想外に胸が傷んだ。
そして奏は思い知らされる。
自分がいかにこの男を恨み、そして皮肉なことにこうなってしまった今でも彼を愛しているという事を…。
失ったと思っていた心はまだ奏の中に居座り、その痛みは永遠に続くのではないかとさえ思う彼にアスタロトは優しい声音を聞かせた。
「誤解だ。確かにオレは酷い真似をした。だが全てはお前を失いたくない故の行動だ。許せ」
「ンっ…!んぅ……ッ」
アスタロトの強引な手は奏の肩を抱き寄せ、精一杯胸を押す彼の抵抗さえ全くの無力に感じさせる程熱く激しく唇を奪った。
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