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奏も他の者に続いて大広間の中心部へと移動し、そして周りの悪魔達と同じ方向に目線を上げた。
そこにはまるで王が民衆を眺め下ろすバルコニーのようなものが設置され、玉座が3脚並べられているが階段のようなものは一切見受けられない。
(なんで椅子が3つも?悪魔の王様ならルシファー1人のはず…)
「セーレ。あの椅子には誰が座るの?三脚もあるけど」
奏はできる限り声を潜め、隣に並ぶセーレに問いかけた。
「地獄の支配者。3体の悪魔」
「!?それってつまり──」
奏が頭に浮かんだ3人の名を確かめようとした時、呻き声にも似た低く不気味な声がどこからともなく聴こえてきた。
最初はほんの数人。
だがその数は次第に増え、やがて大広間にいるほとんどの悪魔が口を揃え同じ言葉を唱え出した。
「っ……」
何か呪文の様なその言葉は、聞けば聞くほど不吉でおぞましいものに感じられるが、どこの国の言葉なのか検討も付かない。
あまりの不快に耳を塞いだ奏だったがまるで効果は無く、彼の手をすり抜け、直接頭の中へ響いてくるように耳の奥深くへと届く。
そしてそれは次第に頭痛を引き起こし、尚も耐えていると目眩や吐き気といった不調に見舞われた。
(なんで僕だけ……っ)
周りを見る限り不調を感じているのは奏1人だけだ。
そんな中、彼の足元はとうとう歪み、ふらつきながらも何とかその集団から抜け出した。
「──おい。しっかりしろ」
「っ!ルキ…さん…」
集団に加わる途中のルキフゲだったが、すっかり青ざめて柱に凭れかかる奏を見かけ彼の肩を支える。
「邪気に当てられたか」
「邪、気……?」
「この言葉は言わば悪魔を讃え、魔力を強めるものだ。人間が聞けば必ず災いが起こるくらい強力だからな、お前にはまだキツすぎるんだろ」
「なんでそんなっ…、呪文を…っ…」
「我らの偉大なる悪魔……つまりあの3人を呼び出してんだ。ちょっと待ってろよ」
苦痛に蹲る奏の頭を片腕で軽く抱き寄せ、ルキフゲは二言三言何かを囁いた。
すると今までの苦心が嘘のようにあっさりと引いていく。
「あ……」
「どうだ?まだツラいか?」
「ううん、ありがとう。その……、さっきはごめんなさい…」
「…………別に」
怒るに怒れず晴れやかな気分にもなれないルキフゲは複雑な心境で礼と謝罪を受け流し、今だ呪文を唱える悪魔の集団に目を遣った。
「そろそろお出ましだろう。行くぞ」
「あ、あの…っ…」
「あん?まだ何かあんのか?」
「その…………"使える"?」
「っ……何なら試してみるか?」
「いや、いい」
「…………。(なんなんだよコイツは…)」
決して悪気がある訳ではない。
しかしだからこそ奏の考えが分からず、取り留めのない彼の性格にルキフゲは深い溜め息を吐いた。
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