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新生徒会役員⁈ 2
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ハァ。
ここに着くまでに、何度ため息をついたのか。
無駄に豪華な造りの扉の前に着いた俺は、重い気持ちでコンコンとノックする。
すると、中からどうぞ、と相楽先輩の声がした。
「失礼します」
扉を開けると、中には相楽先輩ただ一人。
アイツの姿が無いことに、少し安堵する。
「座って?」
昨日と同じソファに促され、とりあえず座る。
「生徒会の件だけど、白川くんには書記を…」
「あの。」
相楽先輩の話を途中で遮り、声をかける。
先輩は、ん?と首を傾げて、俺を見てきた。
「俺、できません」
キッパリとそう伝える。
「どうして?」
「人前に立つのは得意じゃないんで…」
すると、先輩はふふっと笑った。
「それにしては、今日の挨拶は物おじもせずに堂々としていたけど?」
「…それは、前もって知らされていたので…」
「じゃあ、大丈夫。
もし人前に立つことがあれば、前もって教えるから」
ね?と笑顔で首を傾げる先輩に、いや、そーいう問題じゃねぇんだよ!と心の中で突っ込む。
「それに、俺、一般庶民ですし」
「君はあの難しい試験をクリアした特待生だよ?
そんなの関係ないない」
いや、だから嫌なんだってば。
「他にも、生徒会役員にふさわしい生徒がいるんじゃないんですか?」
あれだけ人気な人達だ、きっと生徒会に入りたい輩は沢山いるだろう。
「君は十分ふさわしいよ?」
ふさわしくなくて、いいんだっつの!
俺が拒否の言葉を並べても、相楽先輩は肯定の言葉を並べてくる始末。
どう断ろうかと考えあぐねていると、先輩がニッコリ笑って、俺を見た。
「もう、君が生徒会に入るのは決定なんだ。
理事長が推薦したし、俺たちも了承したし。だから、諦めて?」
どうやら、俺が謙遜ではなく嫌がっていることを分かっているようだ。
その有無を言わさない笑顔が、なんだか怖い。
「じゃあ、役員について、説明するね?」
にっこりとそう言われ、俺は頷くしかなかった。
やっぱりこの人は、笑顔でモノを言わせるタイプだ。
ざっと説明を受け、俺は生徒会役員である証の、校章が入った銀色のピンバッヂを受け取る。
書記である俺は、ただ会議の書類をまとめたりするだけの簡単な業務ばかりらしい。
「それから、生徒会役員は特別寮になるんだけど…」
「それって、必ずその特別寮…?に行かないといけないんですか?」
絶対だったらどうしよう。
「まぁ、今までの生徒会役員は全員特別寮だけど…どうして?」
「あの、俺今日友達ができて…。
偶然にも、その友達の部屋は俺の部屋の隣と向かい側なんです。
この学園には来たばかりでよく知らないことが沢山なので、友達が近くにいる方が安心するというか…。
生徒会には入ります。たけど、部屋はそのままがいいです」
生徒会役員全員ということは、当然アイツも特別寮に住んでいるんだろう。
ただでさえ生徒会役員なんて嫌なのに、住む場所までアイツと近いなんて考えただけでゾッとする。
住む場所だけは、断固拒否だ。
「んー…まぁ、それならしょうがないかぁ。
わかった。理事長と会長には、そう伝えておくよ」
その言葉に、心底ホッとした。
相楽先輩に別れを告げ、生徒会室を後にする。
次に生徒会室を訪れるのは、金曜日。
週2日、月曜と金曜に集まりがあるらしく、授業が終われば生徒会室に行かなければならない。
行事が近づけば、曜日に関係なく徴集されるらしいけど。
アイツへの対処法としては、なるべく近づかない、極力話さない。
あとはバレずに過ごせることを祈るしかない。
学園から徒歩5分。
まるでマンションのような、学園寮の玄関へ入る。
広いロビーは本当にコンシェルジュとかがいそうな雰囲気だ。
1階には寮官室や受付、大浴場、コンビニ、カフェ、などがあり、2階より上が寮となっている。
この学園は1クラス約20名で、各学年4クラスずつあり生徒総数約240名。
一般の高校に比べて、生徒数が少ない。
ワンフロアに40部屋あり、
2、3階が1年。
4、5階が2年。
6、7階が3年。
8階が特別寮、9階は食堂とレクリエーションルームとなっている。
エレベーターで3階まで上がり、自分の部屋へと向かう。
その間も、ちらほらとすれ違う生徒。
ちらっと俺を見ては通り過ぎていく。
変に近づかれるよりは、遠巻きに見られているほうが楽だ。
胸ポケットからカードを取り出し、鍵を開ける。
ラフな部屋着に着替えてから隣の亮平の部屋へ向かう。
ちゃんとインターホンまでついているのでボタンを押すと、ピンポンと鳴った。
音は案外普通なんだな──とどうでもいいことを思っていると、ガチャっとドアが開き中から純が顔を覗かせる。
「いらっしゃーい。入って~」
亮平の部屋なのにまるで自分の部屋のように振る舞う純から、それだけ二人の仲の良さがうかがえる。
「ん。お邪魔します」
同じ造りの部屋の中。
純に続いてリビングに入ると、亮平がソファに座り携帯をいじっていた。
「案外早かったな」
携帯をテーブルに置きキッチンへ入ると、オレンジでいいか?と聞いてきたので、うんと答える。
純が亮平が座っていた隣へ腰掛けたので、俺はその向かいにある一人掛けのソファへ座った。
ジュースをテーブルに置き、元の位地に座った亮平が俺を見た。
「拒否できたのか?」
「…無理だった。」
「そりゃ、残念」
ハハっと笑う亮平。
俺はジュースを手に取り、コクコクと飲んだ。
「じゃあ、生徒会に入ることになったんだ?」
テーブルの上にあったチョコレートの包みを開け、口にほうり込む純。
「いや、なんか…強制させられたというか…」
相楽先輩の有無を言わせぬ笑顔を思い出す。
あー、コワ。
「話したのって、相楽先輩か?」
「うん」
「あの人、笑顔だけど、それがやっかいだよなぁ~。
みんなあの笑顔にやり込められるし」
純も、うんうんと頷いている。
やっぱり、俺だけじゃないんだな、そう思ったのは。
「じゃあ、聖夜は特別寮に入るの?」
「いや、それは拒否した。
純と亮平と近いし友達といたいって言ったら、このままでいいって」
すると、純は嬉しそうにハニかんだ。うん。素直な笑顔は可愛いな。
「あ、もう昼じゃん。食堂行こうぜ」
壁に掛かってある時計を見ると、12時を少し過ぎていた。
揃って亮平の部屋を出て、エレベーターへと向かう。
「そういえば、食堂で聖夜を見かけなかったけど…初めて?」
「うん。
昨日ここに来たばかりで部屋片付けたりして疲れたから、簡単にパンとか食って寝た」
エレベーターが開くと、中には数人の生徒が乗っていた。
その中の一人と、目が合う。
んー…同じクラスか?なんとなく見覚えが。
その生徒の横に立つ俺。
…なんで、睨まれてんだ?視線が痛いんですけど。
俺より少し低い位地からの視線が、突き刺さる。
釣り目気味の瞳に、真っ黒のサラサラな髪。
黒猫みたいだな、コイツ。
つーか、いつまで睨んでんだよ。
結局、9階に着くまで、俺から視線が外れることはなかった。
なんだったんだ。
初めて来た学食…学食?レストランじゃね?
三ツ星とかついてそうな。
半ば唖然とする俺。
純たちについていき席に座ると、純が注文の仕方を説明してくれる。
席にあるタッチパネルからメニューを選ぶ…ね。
うーん、オムライスにすっか。
で、カードをスキャン…と。
あとは運ばれてくるのを待つだけ。
…普通さ?学食って、セルフじゃね?
金持ちは、自分では動かないのか?
などと考えていたら、注文したオムライスが運ばれてきた。
半熟のとろっとろ、ふわっふわ卵に、デミグラスソースがかかっていて、すげぇ美味そう。
亮平は洋風ランチ。ハンバーグステーキらしい。
純は和風ランチ。煮魚だ。
「いただきます」
一口、頬張る。
うまっ!!さすが、金持ち校!
最近まともな食事をしていなかったため、ますます食が進む。
「ふふっ、聖夜おいしい?」
「おう!」
「顔に書いてあるよ」
クスクス笑いながら、純も食べはじめる。
ご飯を食べ終わると、食後に紅茶が出てきた。サービスらしい。
食べ終えた食器類を片付けてくれて、飲み物まで運んでくるなんて…やっぱ学食の域を超えていると思う。
この紅茶も美味いが、相楽先輩が入れてくれた紅茶のが美味かったな…とふと思った。
「あ、そうだ。
聖夜、さっきエレベーターん中にいた奴でさ。
お前のこと見てた奴いただろ?」
亮平はコーヒーを飲んでいた。
しかもブラック。
「あぁ、なんか、スゲー睨まれてた気がすんだけど」
「あはは、やっぱし?」
亮平も純も苦笑い。
なに?睨まれる理由があるわけか?
そう尋ねると、亮平が説明をしてくれた。
「あいつは九条麻斗(クジョウアサト)。同じクラスな?
で、生徒会のシンパ。主に会長の」
「シンパ…?」
「ほら、今日もさ。
入学式でキャーキャー言われてただろ?あの3人。
生徒会にはまぁ、所謂親衛隊みたいな奴があってさ。
九条はその親衛隊の隊長」
おぉ、本当に親衛隊とかあるんだな。
って、隊長?
「なんで?1年だろ?あいつ」
「ここは、学年の上下関係って薄いんだよ。
家の持つ権力が大きければ、デカイ顔をする奴がいるってなワケ」
「つまり、九条の家はデカイってことか?」
「そそ。財閥の息子」
「ふぅん。
家がデカイっても、自分が働いて稼いだワケでもねーのに。
くっだらね」
「あははっ。それ言ったらほとんどの生徒、敵に回すぞ?」
亮平はケラケラと楽しそうに笑う。
亮平の言葉から察するに、ここには親の権力を振りかざす馬鹿共が多いってこったな。
「もう、話しがズレてるよ。
つまり、九条くんが聖夜を睨んでたのはね、聖夜が生徒会に入ったからでね」
純が話を元に戻す。
「あっ、そうそう。
九条、生徒会に入りたくて会長に直談判してさ。
まぁ一蹴されたらしいけど。
簡単に言うとだな、¨この僕を差し置いて、生徒会に入るだなんて、許さない!一般庶民のくせに!¨ってな感じ」
は?
マジでくだらねぇんだけど。
「入りたくて入ったんじゃねぇのに」
んな事で怨まれたくねっつの。
「九条にとっては、聖夜が生徒会…っつか、会長に近づくのが気にいらねぇんだよ。
あんまいい噂聞かねぇんだわ、あいつ。
今まで会長に近づいた奴を、親の権力使って学園から追い出そうとしたとかなんとか…。
だから、あんま会長に必要以上に近づかねぇほうがいいぞ?」
めんどいことになるから、と続ける。
なんか、睨まれてる時点ですでにめんどくせぇんだけど…。
っつか、誰が近づくか!頼まれても嫌だっての!
と、心の中で叫ぶ。
二人には、うん、と頷いておいた。
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